「三ツ峠山・三つ峠駅から河口湖畔へ」 2017年12月13日(水)

地理院地図(電子国土Web) 今回の行程のGPS軌跡をご覧いただけます。新しいウィンドゥが開きます。


 行程概要  GPS軌跡をカシミールに取り込んでいます。 


 
 「ヤマノススメ・セカンドシーズン」で観て以来、ずっと登りたかった三ツ峠に行ってきました。
聖地巡礼登山としては谷川岳以来となります。

 三ツ峠は富士山までの距離が20kmということで、富士見の山として昔から人目を集め人気があったようです。

 「ヤマノススメ」では富士急行・三つ峠駅を起点に三ツ峠山までピストンしていますので、登りではこれと同じ行程を辿ります。
しかし自分は極力ピストンは避けたいので、河口湖方面へ続く府戸尾根を下ることにしました。
今回の周回行程のため、まずは河口湖畔にある無料駐車場に車を置き、そして三つ峠駅まで自転車を漕ぐことにしました。
もちろん都合さえ合えば富士急行を利用すれば聖地巡礼登山として更に盛り上がるでしょう。








   
 5:15頃 河口湖畔・山梨県営無料駐車場(830m)を自転車にて出発   

 本当は5時頃に出発仕掛けたのだが、自転車の後輪の空気が抜けていたことで時間を取られてしまった。
しかもネジの具合が悪いのか、空気を注入しても少しずつ抜けていく音が聞こえる。
どうしようかと思ったがもう三つ峠駅までもてばいい、と考えて一か八か出発した。

 タイヤの空気が抜け切る前にどうにか三つ峠駅に辿り着けたが、後輪が段々と重くなっていくため脚力を余分に使ってしまった。




 6:00頃 富士急行・三つ峠駅(610m)到着!

 空気漏れに加えて道間違えで遠回りまでしてしまい、登山の前からサイクリングで大汗を掻いた状態で到着…。
河口湖畔から三つ峠駅までは基本的に下り基調で、自転車で風を切ると肌を刺すくらいめちゃくちゃ寒かった。
でもジムのマシンのようにペダルの負荷が上がることは想定外で着込み過ぎてしまった。

 三つ峠駅の駐輪場に自転車をデポして、待合室で登山準備を整える。








 6:12 富士急行・三つ峠駅出発   

 河口湖からのサイクリングでいきなり汗を掻いて暑かったので、レイヤリングを減らしてから出発する。
でもこの日の朝の冷え込みは相当強く、マイナス7度くらいになっていたと思われる。

 ところでこの三つ峠駅自体も聖地ではあるが、下山後の自転車回収時にゆっくり見学したい。

 三ツ峠山へ向かうルートは駅の東側の小道へ進む。








富士急行の高架下をくぐって下暮地地区へ。行く手にはコブの連なる三ツ峠が歩き始めからよく見えている。   








 6:20 下暮地地区内の道筋において唯一富士山が見えるポイント!  行く手正面に三ツ峠がそびえる

 ヤマノススメの作中でも三つ峠に登る途中の重要なシーンで描かれているところだ!
この時の自分の心境は聖地巡礼の楽しさもあったが、それ以上に今までで一番富士山が大きく近く見えたことに感動した。
本当に銭湯の絵みたい!

 少し進むと建物の陰に隠れるので、富士山が正しくピンポイントで見える場所といえる。








集落の中を緩やかに登っていく。次第に近づいてくる三ツ峠   

 数箇所で分岐はあるが、指導標が設置されているので迷うことはなかった。
ヤマノススメでも言っていたように、駅から山までの道のりが相当長い。
出会った地元の方とご挨拶を交わしつつ、ウォーミングアップのつもりでペースを守って進む。








 6:33 三ツ峠グリーンセンター前(640m) 辻に立つ石碑には本当に南無阿弥陀仏と書いてある。  西桂町の登山案内図によるとまだまだ三ツ峠まで先が長い 

 駅から20分弱で三ツ峠グリーンセンター横を通り掛かる。
ヤマノススメを観ているだけではわからなかったが、三ツ峠グリーンセンターは三ツ峠への道筋には面していない。
この交差点から少し東へ入ったところにあるようだ。

 今日の行程は周回なのでここには下りてこないが、下山後に車で温泉に入りに来ることにしている。

 三ツ峠グリーンセンターを通り過ぎると、道路は舗装路のまま山の中へと入っていく。
身体が暖まるどころか逆に寒くなってきたのでレイヤリングを増やし、ついでに鈴やラジオの準備も行ってから進んだ。








 6:43 山祇神社(660m)   

 小さな川を左岸へ渡ると、山祇神社に辿り着く。
名前が観たことあるような気がして調べてみたら、芸予諸島にある大山祇神社がやはり総本社にあたるようだ。
せっかくなので今日の登山の無事を祈っておく。

 山祇神社を過ぎると舗装路の勾配がきつくなってくる。
この辺りでは早朝散歩中の地元の方と何人かすれ違った。








 6:51 公衆トイレ(680m)  いつしか三ツ峠がだいぶ近くなってきた 

 道路脇に見覚えのあるものが見えたので寄ってみたら、やはり三ツ峠を模した公衆トイレだった。

 行く手には朝日に照らされた本物の三ツ峠が近付いてくる。
この辺りまでで舗装路終点から登る方々と思われる3台の車が通り過ぎていく。
奥まで車を入れるともちろん楽なのだが、それでも今回はヤマノススメどおりに駅から三ツ峠へ登りたい。








 7:07 神鈴の滝遊歩道入口  滑状の神鈴の滝 

 舗装路の脇から神鈴の滝へ続く遊歩道が分岐していた。

 ヤマノススメの神鈴の滝のシーンでは、肝心の滝の姿が描写されていなかったよう。
それもそのはずで、この案内板によると神鈴の滝は全長400mの滑滝のようだ。
遊歩道から見下ろすと、確かに一枚岩の岩盤の滑滝が長く続いている。
もちろん幽霊が出そうなところではなく、おとなしくも優雅な滝だった。








神鈴の滝の上流側には自然の岩壁を模した堰堤が設けられている 見上げるとポコポコとコブが連なるユーモラスな三ツ峠

 最後だけやや落差のある滝になっている。夏ならば涼しげで良いところと思う。
そして上方にはヤマノススメで描写されていた擬岩の堰堤が見えている。

 神鈴の滝の遊歩道から再び単調な舗装路に戻って登り続ける。
いつしか舗装路の周囲が整地されたところに出てくるが、この辺りがいこいの森のようで多数のベンチやトイレが設置されている。
ここには三ツ峠についての案内板も設置されていた。










 三ツ峠山

 富士箱根伊豆国立公園に属す
 標高 1786m

 「甲斐国志」(1814) 山ノ部 三ツ峠山に 「…峰ハ奇岩峨峨トシテ三峰ニ秀ヅ故ニ三峠ト云フ岩上ニ小祠アリ三峰権現ト云フ…」
と記されている。三つの峰からなっていることから三ツ峠山と呼ばれるようになったとされている。
また湧水が豊富なことから水峠が語源との説もある。
 三ツ峠山は高山植物の宝庫としても有名であり、山頂の草原は春から初夏にかけて色とりどりの花が咲き誇る。
屏風岩の岩場はロッククライミングの練習場として知られ、また山頂からの眺望はすばらしく目をみはるものがあり、
特に富士山の眺めは絶景である。
 三ツ峠山は信仰の山でもあり、古に役の行者の修験の場として開かれたといわれ、以前から中央の峰に
「本社石尊大権現」、東の峰に「北辰妙見大菩薩」、西の峰に「屏風岩清滝不動明王」が祀られていた。
 天保三年(1832)に三ツ峠山中興の祖、善応空胎唯阿上人(天台宗弾誓派)が入山し、神鈴峰(みすずみね)と呼び御堂や
石造物を建立し修行と布教につとめた。以後弟子たちが明治の初めまで六代にわたり法灯を引き継ぎ、近郷近在の信者に
信仰を広めた。
 だるま石、六字名号塔、不二石、愛染明王塔、八十八大師、空胎上人の墓、岩屋観音(空胎上人入山以前の延享三年
(1746)四月吉日と刻んである。)、神鈴権現社、一字一石供養塔等の史跡、石造物が数多く残されている。

 平成22年10月
  西桂町教育委員会
  西桂町文化財保護審議会
 7:34 ゲート(940m) ※ ここまで車で上がれる   

 三つ峠駅を出発してから1時間20分ほどでようやく舗装路終点のゲートに到着した。
ここまでで既に標高差300m超登ってきている上に、空気の減ったタイヤでのサイクリングの影響もあって既に歩き応えは充分。
しかしようやくここから本格的な登山道が始まるので、気合を入れ直さなくてはいけない。
車で登山準備中の方々とご挨拶を交わしてから橋を渡っていく。

 ヤマノススメを観たおかげで設置されている指導標まで見覚えがあるが、
この先も実際の景色と見比べていくのが楽しみだ。








 西桂町指定史跡 だるま石

 この場所は旧地名を“畳石”または、“御丈石”といわれ、畳七枚を敷ける平らな意思があったが、水没してしまった。
ここへ、文久年間(推定)三世信盈安西栄阿和尚のとき、多数の信者が集まって、頂上にむかって左側の“あしだが谷”という
沢から索いてきて建てたといわれる。この巨大な自然石と、きざまれている梵字によって、だるま石建立の目的がごく最近
解明された。この文字は、アークと読み、密教の五智如来の中心である大日如来を意味する。大日如来は、密教の根本教主で、
その御利益の光明は四方を照らすことから、大光明遍照といわれる。五智如来とは、密教の胎蔵五仏として、大日、宝幢、開敷
華王、無量寿、天鼓雷音の五如来をいう。
 五智如来は、「秘蔵記」という仏典に、五智如来を水にたとえて
 「水が靜澄で凡ゆる色を具現し(宝幢)、凡ゆる像が水に現れて無高無下で平等(開敷華王)、水に一切の色の差が現れる
(無量寿)、一切の情非情の類は水に寄って滋長する(天鼓雷音)」として、その性質の片寄らないことを説明している。
水の豊富な三ツ峠は、古来数多くの水難をもたらしていることから、水難防止の祈願をこめて、五智如来の中心仏である
大日如来の梵字を刻んだものである。
 石の巨大さは、水難による苦労の大きかったことをそのまま物語っている。
 これを塔婆にすると次のようになる。 <以下略…>


 
 7:37 達磨石(950m)到着   

 駐車スペース前から橋を渡ってすぐのところに達磨石があった。
これが梵字でアークと読む達磨石…。
隣に難しい案内板があるが、内容をみると何となく分かったような分からないような。

 ヤマノススメのシーンを思い出してみると、この辺りに「山はゴミ箱ではありませ〜ん」の看板があるはずだが見当たらなかった。

 達磨石から三ツ峠山頂まで3km。
ここからが本格的な登山道となるので、達磨石の前で小休止をとっておく。




 7:45 達磨石出発








この赤っぽい看板も見覚えがある   

 達磨石から少し登ったところで再び舗装路に出てくるが、すぐに反対側の山腹に取り付いていく。








序盤は比較的緩くて歩きやすい登山道が続く  ヤマノススメでも言っていたようにベンチが本当に多い 

 三つ峠駅から長い舗装路歩きが続いたので、登山道に入るとやはりほっとする。
三ツ峠は後半の登りのほうがきついはずなので、前半で疲れないようにペースを抑えたいところ。








 8:16 股のぞき(1,200m)到着  股のぞきを過ぎてもしばらく緩い登りが続く。冬枯れの木々の向こうには三ツ峠が透けて見える。 

 山腹から尾根に乗り上げたところが股のぞきだった!
山腹道を歩いている時から進行方向正面に見えてくる富士山に気付かずに通り過ぎるのは、
雲で遮られていない限りは難しいだろう。
もっとも今の冬枯れの時期では、ここに限らず富士山はけっこうあちこちから見えたのだが。

 股のぞきでもベンチを活用して小休止をとっておく。

 最近、NHKの「小さな旅」でも三ツ峠が採り上げられていて、ここの山行を計画していた自分にとってこれ以上ない良い資料となった。
その中で登場していたガイドさんが、やっていた股のぞき(天橋立での股のぞきで有名なポーズ)を試しにやってみた。
でも逆さで観るよりも、富士山はやはりそのまま観るのが一番かもしれない。




 8:24 股のぞき出発








 8:40 馬返し(1,320m)   

 股のぞきからさほど歩いてないうちに馬返しに到着。
ここからも西側には富士山がよく見える。

 ヤマノススメではこの先の急登であおいちゃんが疲れてくるので、
その前にここでも小休止を入れておく。




 8:46 馬返し出発








今日一番のまとまった急登が始まった  部分的に緩くなるところもあるが… 

 馬返しで上方の等高線を数えてみて、これはしばらく続く急登で我慢のしどころだと気合を入れて掛かった。
岩場の中の段差の大きな登りが多くなる。焦らずじっくりと標高を稼いでいく。








これはペースを誤るときつい急登と感じた  皆に遅れ気味になってあおいちゃんが登っていた辺りだ 

 冬枯れの時期ならではで樹林帯の尾根でも先が見通せるのだが、なかなか終わりの見えない急登だった。
ヤマノススメのシーンを思い返すと、そもそもあおいちゃんが離れないよう、始めから楓さんが後ろに付いていれば良かったのではと考えたりしながら登っていく。
でも全く波乱なく順調に登れても、話の面白みがなくなるだろうと思い直した。







 9:23 不二石(1,540m)   

 あおいちゃんと楓さんが立ち休憩をとった辺りの雰囲気に似ている。
もたれて休むのにちょうど良い感じの岩だった。








やっと空胎上人の墓と八十八大師が見えてきた   

 馬返しから約45分で標高差300mの急登が終わった。
行く手に八十八大師が見えてきてほっとした。

 八十八大師以外にも周辺にはお墓や石碑などの遺構が点在する。
思っていた以上に三ツ峠は信仰の山の雰囲気が随所で濃厚だった。








 9:30 八十八大師(1,580m)到着  ヤマノススメでは、可愛い!とここなちゃんが言っていたシーンが印象的。 

 NHK「小さな旅」を観て知っていたが、お地蔵さんは地元の方々の手縫いによる真新しい赤布を纏っている。
信心深くない自分としても、八十八大師は心温まる光景だった。

 八十八大師の傍らにはさくらフィルムと書かれた年代物の指導標があるが、
自分が初めて写真を撮影した子供の頃にはあったサクラカラーの前身だろうか。
自分も長らくフィルムで撮影していた期間があるが、ずっと富士フィルム派だったのでサクラカラーは使わずじまい。
谷川岳のマツダランプといい、山中では時々年代物の指導標が観られるのも楽しみだろう。




 9:35 八十八大師出発

 ここからは山腹道が続く区間となるので、急登で乱れた息も整えられる。








 9:39 親不知(1,590m)   

 八十八大師を出発してすぐに親不知の案内板の立つ岩場に差し掛かる。
一番上側の岩には古くからの行場であることを思い起こさせてくれる文字が彫り込まれている。








あおいちゃんが通過を怖がっていた山腹道だろうか   9:47 最も恐怖感を覚えそうなところ 

 傾いた杭とロープ、左側の山腹は急傾斜になっていて、
あおいちゃんが「ここ通るの!?」と怖がっていた山腹道はこの辺りだろうかと推定した。

 途中からは山腹道自体がザレて斜めになってきて、ここはより恐怖心を覚えやすいかもしれないと感じた。
自分の場合は怖さはないけど、スリップに注意して慎重に通過した。




 そしてシーン中では高度感ある山腹道を通過した後、ひなたがあおいに遂に富士山を観るよう促していた。
ということで、自分も足を止めて改めて西側を眺めると…








もし知らずに登ってきていたら相当感動するに違いない富士山の絶景!   

 手前の樹林帯の尾根までヤマノススメのシーンそのままで更に感動した!








ほぼ完全氷結した沢  ヤマノススメではシェラカップで沢の水を飲むシーンがあるが… 

 行く手に富士山の絶景を満喫しながらの山腹道歩きが続く。
途中には完全に氷結した沢もあって壮観だったが寒かった…。

 この辺りから登山道上にもごく一部ではあるが、積雪凍結箇所が見られるようになった。
但しアイゼンを装着する必要まではないと判断してそのまま進んだ。








行く手には三ツ峠山頂本体と屏風岩が見えてくる!   








10:08 屏風岩(1,660m)  屏風岩の向こうには遂に三ツ峠周辺の山小屋が見えてきた! 

 この日は誰も居なかったが、三ツ峠はクライミングの聖地としての顔もある。
登山道はしばらくの間、延々と続く大岩壁に沿って進んでいく。

 時折立ち止まっては岩壁を見上げてルートを目で追っていた。
出来ないと思うから出来ない。実際にやってみれば大概のことは何とかなるはずということで、
クライミングもいずれはやってみたいなと思い始めている。




 屏風岩を過ぎて三ツ峠の主稜線を目指す最後の登りに差し掛かる。
リサーチ不足のため認識していなかったが、稜線を目指すルートは二つあった。
その二つのルートに分かれる分岐では、三ツ峠山頂に近そうだけど何も指導標がない右側ルートと、
“三ツ峠山荘”と書かれた左側のルートがあって、確実に稜線を目指せる左側を選んだ。
結果的には山頂を目指すには遠回りのルートを選んでしまった。
右側を登ると山頂により近い四季楽園付近に乗り上げることになる。








遠回りではあっても稜線までは急登だった   

 遠回りした分緩やかに稜線に乗り上げるのを期待したが、実際にはけっこうな急登を喘いで登ることになった。
でもジグザグの途中では三つ峠駅付近の下界を見下ろせ、大いに達成感を得ることが出来た。








10:29 三ツ峠山荘(1,730m)  三ツ峠山頂(開運山)まであと少し 

 急登を乗り越えて三ツ峠山荘に到着した!
山荘前がそのまま主稜線上のルートとの合流点になっているが、三ツ峠山荘で飼われている犬が座っている。
大きな犬でちょっと緊張したが、実際には吠えられることもなくおとなしく見守ってくれていた。

 三ツ峠ではテント泊は出来ないが、二軒の山小屋があってゆったりと山の時間を楽しむことも出来る。

 三ツ峠山荘でバッジを購入するのは後回しにして、とりあえず東側に控える山頂を目指すことにする。




 三ツ峠山荘から少し東側へ進むと、山頂を間近に見られる展望の良い広場がある。
山頂はあまり広くないが、ここなら大人数でも憩うには十分な広さがある。








10:33 四季楽園(1,720m)  1,720mコル 

 広場を通り過ぎると、屏風岩から見えていた四季楽園に着く。
こちらも宿泊可能で山頂に最も近い山小屋となっている。そして前述の2ルートのうち右側を登ると四季楽園そばに登ってこられる。
ヤマノススメの作中ではあまり詳述されていなかったが、こちら側から登ってきていたと想像される。

 四季楽園を通り過ぎると、山頂手前最後のコル(1,720m)を通過。
ここでは御巣鷹山へ通じるルートが分岐しており、登頂後の周回に利用することを想定している。

 稜線まで上がると日当たりの悪いところでは雪が目立っていたが、積もってから一度も融けていない新しい雪で滑りにくかった。
サクサクと新雪の感触を楽しみながら山頂を目指す。








下界からも山頂の目印になっていたNHKの電波塔が見えてきた!   

 三つ峠駅からけっこう長くて登り甲斐のある道のりだったが、待望の山頂はもうすぐそこだ!
ヤマノススメのシーンを思い起こしつつ雪を踏んで登っていく。

 「歩け。歩け。歩け。歩け。もう少し。もう一歩前へ。」








10:43 三ツ峠山・開運山山頂(1,785.2m)到着!!   

 着いた〜!

 あおいちゃんでなくても、本当に登山の楽しさと達成感に包まれる絶景が望める素晴らしい山頂だった!!

 山頂からは秩父山塊、南アルプス、丹沢などほぼ全方位の展望を得られるが、三ツ峠においては誰しもが富士山の雄姿に目を奪われるだろう!
特に空気の澄んだ冬晴れの午前、順光で眺める富士山は本当に絵に描いたような美しさだ。

 既に昼前近い時間帯だったが、予想外に山頂滞在時間の殆どが自分だけの貸し切りとなった。

 現在地の最高峰開運山に加えて、御巣鷹山、木無山の合計三峰を併せて三ツ峠と呼ぶそうだが、
下調べによって実質的に山頂として扱われているのはここだけということが分かっている。
それでも一応他の二峰も後ほど寄ってはいくが、最高峰開運山で出来るだけ長く過ごしていきたい。








風は強いがせっかく持ってきたので、望遠レンズに交換して富士山を撮影した   

 三ツ峠でも相当風が強くて寒かったが、ここよりもまだ2,000m高い富士山では暴風となっているだろう。
冬場は富士山より南側では風で雪が飛ばされ、雲のように見えることがあるらしい。








富士山の登山道のジグザグがハッキリと肉眼でも見て取れた!  有名な三ツ峠の石碑ではあるが、富士山と合せて撮ると逆光になってしまうのは仕方がないところ。 

 今まで混雑を敬遠して避け続けていたが、ヤマノススメの聖地巡礼の目的も出来たし、
来年以降にそろそろ富士山に挑むことを検討してみようとこの日に決めた!

 但し自分は初めてのアルプス登山だった白馬岳で高山病になったので、
あれからアルプス登山を重ねてきたとはいえ富士山へ登るに際して全く不安がないといえばうそになるが…。








水が豊富な山ということを山名由来とした説を採用して点名を名付けたのだろうか。  甲府盆地に広がる街並み。北側の山々は冬型の気圧配置の影響か雲が多いようだ。 

 殆ど地面に埋もれそうな三角点「水峠」を見逃さずにタッチしておく。




 今回の山行を決めたのは、冬型の気圧配置で南部の山ほど天気が良い見込みだったことに背中を押されたこともある。
山頂から北側には甲府盆地が広がるが、明日登る高尾山からの帰り道に甲府の武田神社(躑躅ヶ崎館跡)に初めて訪れることも予定していた。








山梨百名山もこれから参考にしていきたい   




11:15 三ツ峠山・開運山山頂出発

 出発前に数人の方が登頂され、それほど広くない山頂は一気に賑やかになった。
三ツ峠の石碑をバックに記念写真を撮って差し上げたり、下山ルートなどの情報交換を行ってから山頂を出発した。








11:18 1,770mピーク   

 三ツ峠の三峰をもれなく廻ってから、府戸尾根を下っていくことにしていた。
とりあえず御巣鷹山を目指すために反時計回りで歩いていく。

 三ツ峠山頂(開運山)からほど近いところに巨大な電波塔施設に占拠された1,770mピークがある。
麓からも目立っているはずだが、地形図にも山名記載の無い無名峰で山名標なども全く無い。








11:23 1,740mの分岐  二つめの山頂である御巣鷹山が見えてきたが… 

 北隣の御巣鷹山への最低コル付近にある1,740mの分岐を通過。
御巣鷹山登頂後にはこの分岐から三ツ峠山頂(開運山)を通らずに四季楽園へ直接戻ることが出来る。

 樹林帯はすぐに途切れて、これまた電波塔施設に占拠された御巣鷹山が見えてくる。








11:30 三ツ峠山・御巣鷹山山頂(1,775m) 三ツ峠と富士山が並んだ光景を見るために御巣鷹山まで足を延ばす価値はある。 

 三ツ峠の三峰のうちの一つではあるが、山頂に到達したことを実感させてくれるものは何も無い。
念のために施設の周囲をぐるっと回ってみたが、山名標も展望が広がるところも無かった。

 この先、河口湖畔まで行程が長いので御巣鷹山はすぐに出発。
来た道を戻っていくところで開運山と富士山が並んで見えたことだけが収穫だっただろう。




 前述の1,740mの分岐から山腹道へ入って四季楽園へ。
そして西側の広場まで戻ってきたところで小休止をとる。








直下に屏風岩を抱える三ツ峠山の雄姿  三ツ峠山荘、府戸尾根入り口 




12:05 三ツ峠山荘(1,730m)出発

 10分近く小休止をとったあとで出発。
すぐ西側にある三ツ峠山荘で三ツ峠の山バッジを買い求めてから、いよいよ府戸尾根の下りを開始する。
なお三ツ峠山荘は通年営業の山小屋で、出来れば雪の時期にも登ってきたいなと思う。

 府戸尾根へは三ツ峠山荘のテラス前から入っていく。




 府戸尾根を下っていきながら、三ツ峠の残る一峰である木無山の山頂の接近を注意しながら歩いていく。








12:12 木無山山頂付近の分岐点(1,720m)  天上山まで6.5km 

 地形図どおりに1,732m標高点付近にて母の白滝経由で河口湖へ下るルートと分岐する。
地形図では“木無山”の山名表記が少し北にずれているのが気になるが、山と高原地図では1,732m標高点を木無山としている。
開運山や御巣鷹山に比べると更に掴みどころのない木無山だが、1,732m標高点はこの分岐のすぐそばにある。

 しかし植生保護のためか標高点を取り巻くように柵が張られており、
柵が無かったとしても濃い笹薮に覆われており展望も得られないようなので踏み込むには躊躇してしまうだろう。

 実質的に標高点への立ち入りが規制されているためか、木無山の手製の山名標が分岐の指導標に取り付けられている。

 御巣鷹山に続いて木無山もがっかり感の強いピークハントだった。
まあ開運山が本当に素晴らしい山頂なので特に不満に思うことはない。




 木無山山頂の確認がとりあえず終わったので、天上山へ向けて本格的に府戸尾根の下りに掛かる。
しかし天上山まで6.5km、2時間10分の道のりは短くはない。下りもある程度気合が必要だろう。








比較的緩い下りが続く府戸尾根  部分的に展望を得られるが基本的には樹林帯の尾根がずっと続く 

 三ツ峠を目指すルートの中では長丁場でややマイナーなイメージがあったが、終始明瞭な登山道が続いている。
いつの間にか日は西に傾いてきて、シルエット気味になった富士山に向って下っていく。
これで展望があればもっと楽しい尾根歩きなのだろうけど、府戸尾根は終始樹林帯で期待が大き過ぎた。

 部分的に展望が広がるところがあって、三つ峠駅付近が見えていた。
下っていく先は河口湖畔なので、まだまだ先が長いことを実感する光景だった。








殆ど緩やかな下りなので歩きやすい反面、なかなか標高が下がらずにもどかしく思えるかもしれない   

 この日も三ツ峠までの聖地巡礼登山でかなり時間を掛けたため、想定よりも行程は遅れ気味。
府戸尾根は快調に歩けるために比較的ペースを早めて下っていった。








13:00 送電線鉄塔(1,350m)  河口湖も見えてきたが、まだそれなりに距離と標高差がある… 

 府戸尾根で唯一となる送電線鉄塔へ辿り着いた!
期待どおりに素晴らしい展望が広がっており、これでこそピストンを避けた甲斐があったというもの。
ここまでで三ツ峠から下りで1時間弱。河口湖畔までほぼ中間にあたるのでなかなか良いペースだった。








送電線鉄塔からは更に大きく富士山を眺められる   

 展望に乏しい長い下りの府戸尾根において、ここは絶好の休憩スポットだった。




13:13 送電線鉄塔出発








13:24 (1,300m)   

 しばらく緩くて変化に乏しい尾根歩きが続いた後で、ここでも大きく展望が広がってくる。
ここは霜山の直前の尾根の転換点にあたり、下吉田駅(新倉)方面へ別尾根とルートが分岐する。
目指す霜山と天上山へはここから右手へ曲がっていく。








13:27 霜山山頂(1,301.7m) 三等三角点「新倉組」 

 前述の転換点からすぐに霜山に到着。残念ながら展望は無い。
この三角点ピークからも別尾根が派生しており、念のために地形図とコンパスで方向確認してから天上山へ向かった。
登りであれば全く問題ないだろうけど、下りだとうっかり間違えやすいと感じた。
ここではすぐに要注意箇所と気付けたが、この後で久しぶりのルートミスをすることになってしまう。








13:45〜14:05 ルートミスにより結果的に20分間ここで滞留したことに…  舗装路で尾根を分断されていれば要注意と認識していたはずだが…

 霜山からも快調に下ってきて舗装路に出てきた。
結果的に舗装路が原因でルートミスをすることになったのだが、この時の読みは舗装路を少し下ったところから続きの尾根に入るというものだった。

 しかし続きの尾根は舗装路を挟んですぐ目の前にあった。
この時は気付けなかったが、その続きの尾根への入り口には天上山を示す小さな指導標があった。
その近くにはもう一つ古い指導標が地面に落ちていたが、舗装路からみると少し凹んだところにあってこれにも気付けなかった。

 ここは歩き始める前にもう少しじっくりと周辺を観察するだけでミスをする前に気付けたはずで、原因は思い込みと確認不足だった。




 舗装路を歩き始めてなかなか続きの尾根の入り口が見えてこないこと、
しかも目指していた天上山へ続くと思われる平坦な尾根が道路の北側に見えてきたことでルートミスに気付いた。
結局、道路沿いの擁壁が途切れたところから山の斜面を登って尾根の直上を目指した。

 予想どおりに尾根の直上には明瞭な登山道があり、そして振り返ってみるとすぐ近くに上記の間違ったところが見える!
間違ったところをはっきりと確認しておこうと思って引き返した。
ということでGPSデータは途中で不自然に円弧を描くこととなった。GPSはルートミスの確認まで出来てしまう。




 調子良く府戸尾根を下ってきたが、ここで思わぬハプニングとなった。
でも時刻は14時過ぎ。焦らなくても下山するまで充分に時間はあると気持ちを切り換える。




 下りも後半になってきて、ルートミスで登り返した分も加わって、さすがに足が疲れてきた。
ここにきて1,151mピークと天上山への登り返しは地味で短いがけっこうきつい。
この2つのピークを通らない山腹道もあるのだが、せっかくの機会なのでしんどいほうを選んだ。








14:23 天上山山頂(1,139.9m)  シルエットではあるが天上山からの富士山の眺めも素晴らしい 

 ルートミスの20分を除くと、ほぼコースタイムどおりの約2時間でようやく天上山山頂へ到着した!
ここまで辿り着ければもう登り返しはないのでほっと一息付ける。

 ここで今回の行程でもう一つ失敗していたことがあった。
山行記録をまとめていると、天上山にも三角点があったことに気付いた。
三角点を見逃すほど疲れていたとは思えないが、何にしても集中力を切らしていたというしかない。
またいつか天上山にも再訪して三角点を確認したい。




 天上山山頂西側からは富士山がまた一段と大きく見えるが、日が西に回って完全にシルエットになっている。
再訪時には天上山から三ツ峠へ登っても良いかもしれない。




14:29 天上山山頂出発

 天上山山頂から河口湖畔へは約30分。
長い下りも先が見えてきた。








天上山付近からはかなり遠ざかった三ツ峠を観とおすことが出来る  








14:37 カチカチ山展望台(1,080m)到着   

 天上山から少し下ったところでカチカチ山展望台に辿り着く。
通常であればここからロープウェイで下山してしまうことも出来るが、この日はメンテナンスのために営業休止であることも下調べで分かっていた。








カチカチ山展望台から改めて富士山を眺める  ロープウェイは止まっているが、数人の観光客が歩いて登ってきていた。 

 山の世界から俄かに観光地に入ってしまったが、富士山の展望は相変わらず素晴らしい!

 ヤマノススメでは、カチカチ山展望台から三ツ峠を目指すと富士山が初めから見えてしまうということで却下されたが、
確かに現地に立ってみるとなるほどと納得がいく。
それにしても、ヤマノススメは本当にしっかり取材しておかないと描けない漫画だと今日の山行を通じて改めて納得した。

 ところでつい最近まで知らなかったが、昔話のカチカチ山は天上山が舞台になったという説があるようだ。
ということでタヌキは河口湖に沈んだことになるが…。








14:44 あじさいハイキングコースより下山再開   

 カチカチ山展望台で少しだけ観光気分を味わってから下山を再開する。
ここから下はあじさいハイキングコースとして、殆ど公園の遊歩道のように整備されている。








15:04 護国神社入り口(870m)   

 カチカチ山展望台から20分で護国神社入口へ下りてきた。
ここからは案内板も参考にして続きの遊歩道を下っていく。








 
15:10 あじさいハイキングコース登山口(830m)  カチカチ山ロープウェイ 

 旅館街の裏手の急斜面に設けられたジグザグの遊歩道を下りきると、旅館の駐車場に出てきた。
ここにはあじさいハイキングコースと書かれた指導標しかなく、三ツ峠への登山口でもあることを認識し辛いかもしれない。

 登山口の駐車場からは河口湖畔を通る国道137号を北上する。
河口湖畔もけっこう観光客が多くて賑わっている。

 国道からはカチカチ山ロープウェイがメンテナンスのために途中で止まっている光景が観られた。








 
   
15:16 河口湖畔・山梨県営無料駐車場(830m)到着!   

 自転車で出発してから10時間掛かってようやく戻ってきた!
何かとトラブルもあったが、本当に充実した行程で最高の気分だった。

 あとは暗くなる前に三つ峠駅を見学、自転車を回収、そして温泉とまだやることがある。
河口湖畔から車を走らせて早々に三つ峠駅へ向かった。








 
 
15:52 富士急行・三つ峠駅 駅前の商店の看板も見覚えが… 

 道路が混んでいたこともあって30分ほど掛かって三つ峠駅に到着。
改めて三つ峠駅の内外を見学して回った。あらゆるものがヤマノススメのシーンそのままだった。








 
 
富士急行・三つ峠駅  駅の背後には三ツ峠がよく見える








 
 
三つ峠駅  どうにか日没直前に取材出来ました 

 三つ峠駅から三ツ峠へ登るのが伝統的ルートでもあり断然お薦めと思う。








 
 
三つ峠駅改札前。聖地であることを強烈にアピールしてくれています!   




 三つ峠駅取材中、三ツ峠山頂で出会った方々が下りてこられて偶然の再会となった。
自分も出来れば電車でアクセスするまで再現してみたいが…。
それにしても三ツ峠は河口湖も達磨岩へも下りのコースタイムがあまり変わらないことを実感した。




 取材が一段落してから忘れずに自転車を回収。
今年中はもう自転車の出番はないが、来年春以降に使うまでに空気漏れを修理しておかなくてはいけなくなった。




 三つ峠駅を出発して三ツ峠グリーンセンターまで車を走らせる。
下暮地の集落内の道路は狭いので運転は慎重に。








 
 
夕暮れ時の富士山  三ツ峠グリーンセンター

 例の展望スポットで改めて富士山を眺めてお別れを告げた。
でもこの翌日に高尾山からも眺められるのだが。




 車だとあっという間に三ツ峠グリーンセンターに到着!
早朝からの長丁場でしっかり汗を掻いて、そして身体が冷え切っていたのでもう待望の温泉だった!
ヤマノススメでの4人と同じ思いで温泉へ突撃した♪

 温泉の光景も内湯、露天風呂ともヤマノススメそのままだった!
しかも熱がりの自分にも程好い湯加減でついつい長湯してしまう。
本当に生き返った思いだった。

 休憩室も広い畳敷きで落ち着ける。
TVで翌日の天気予報を確認したりして一息入れた。




 充分に休憩をして身体を休ませてから三ツ峠グリーンセンターを出発。
コンビニで夕食、朝食を仕入れてから、この日は近くの道の駅つるにて車中泊とした。




 翌日、もう一つの聖地巡礼登山として、初めて有名な高尾山へ向かう。
もちろんいつものように薄暗い頃から登り始めるとすると逆算して3時起床。
4時頃出発(高尾山口駅まで所要約1時間)と段取りを決めてから21時前にはすんなりと就寝出来た。




 〜 終わりに 〜

 「ヤマノススメ」のおかげで知ることとなった三ツ峠。
聖地巡礼登山としてももちろん楽しめましたが、終日快晴に恵まれて最高の山行となりました。
三ツ峠は山梨県での好きな山の一つになったことは言うまでもありません。
そして三ツ峠に登ったことで、次は富士山へといざなわれるのは自然な成り行きかもしれません。

 富士山は少し先の話になりますが、とりあえず翌日こちらも初めてとなる高尾山へ向かいます。








行程断面図です




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