瑞牆山(みずがきやま)・金峰山」 2017年11月 6日(月)

地理院地図(電子国土Web) 今回の行程のGPS軌跡をご覧いただけます。新しいウィンドゥが開きます。


 行程概要  GPS軌跡をカシミールに取り込んでいます。  



瑞牆山は岩がちなルートの急坂となりますが技術的に難しいところはありません。
金峰山も特に難所はありませんが、瑞牆山と併せて登ると行動時間が長くなります。
しっかりと事前調査を行って、何とか明るいうちに下山出来ると計算して臨みました。
しかし両方の山に登るには、1泊2日の行程で臨むことが理想的で安全と思います。

深田久弥著「日本百名山」によると…

 瑞牆山について

“(前略…)この山は岩峰の集合体とでも言うべきか。
岩峰群を持った山は他にもあるが、瑞牆山のユニークな点は、その岩峰が樹林帯と混合しているところである。
まるで針葉樹の大森林から、ニョキニョキと岩が生えているような趣である。”





そして金峰山については同じく「日本百名山」において、深田氏にとって大先輩という木暮理太郎氏の言葉が引用されている。

 金峰山について

 
“「金峰山は実に立派な山だ。独り秩父山脈の中に嶄然頭角を抜いているばかりでなく、
日本の山の中でも第二流を下る山ではない。世に男の中の男を称えて裸百貫という諺があるが、
金峰山も何処へ放り出しても百貫の貫禄を具えた山の中の山である。」”





 秩父山地は東京、埼玉から長野南東部の八ヶ岳の手前まで広がっていて、その西部は奥秩父と呼ばれています。
ちなみに奥秩父という呼称が使われるようになったのは、上記の木暮理太郎氏による紀行文が始まりといわれています。

 そろそろアルプスでは雪の便りも聞かれ始めた時期にあたり、自分にとって全く手付かずの奥秩父に目を付けました。
今回は奥秩父での代表的な二峰、瑞牆山と金峰山を日帰りで踏破してみることにしました。

 なお山行後にいつも山行記録を読んでいただいている方からのメールで知ったのですが、
瑞牆山と金峰山もヤマノススメ(原作)で採り上げられているそうです。
アニメ化された谷川岳までの後を読みたくて、全巻(2017年11月現在は14巻まで)一挙に購入しました。
当初は原作での瑞牆山・金峰山での描かれ方を読んだうえで、今回の山行記録を作成しようとしました。
しかしなかなか読み進める時間が無く、慌てて読むものでもないと考え直しました。
よって今回は聖地巡礼の要素は外して、普通に山行記録を作成しました。
来年以降の再訪時に改めて聖地巡礼登山をやりたく思います。












 深夜に超早起きして約2時間のドライブで登山口となる瑞牆山荘に到着。
用意していた朝食を摂って、長くなるはずの山行に備える。








 4:05 瑞牆山荘(1,510m)出発!   

 まだ真っ暗な時間帯ではあるけど、瑞牆山への急登が始まる頃から明るくなってくるよう見計らって出発する。
明るい時間帯ならば何も問題はないが、登山口周辺の里宮平はその名のとおりになだらかな地形なのでルートを外れないように細心の注意を払って進んだ。

 里宮坂と呼ばれる急坂に差し掛かると、ルートは絞られてくるのでかえって気持ちは楽になる。

 当面の目標となる富士見平小屋まで標高差300m、標準所要時間は50分。
今日の長い行程の中ではほんのウォーミングアップ程度の区間。
出来るだけ疲れないようにゆっくりめに登っていく。

 急登を経て尾根に乗り上げたところからは、瑞牆山と思われる山影がぼんやりと黒く見えている。
ここからの眺めは夕方の楽しみに置いておく。








 4:58 富士見平小屋(1,810m)   

 暗闇の中から発電機の音が聞こえてくるとやはりホッとした。
小屋の外では昨夜から泊まられたと思われる数人の方が居られた。

 富士見平小屋前にあるこの分岐は今日の行程において重要極まりない場所だ。
ここを今日だけで都合3回通り掛かることになる。

 まずは瑞牆山を目指して左折する。
富士見平小屋からは飯森山北斜面の山腹道となる。
最初だけ短い登りで始まるが、水平区間を経て激下りになっていく。
期待どおりにはなかなか明るくなってこないので、ヘッドライトの明かりを頼りに慎重に歩いていく。








 5:44 天鳥(あまどり)川渡渉地点(1,800m)   5:49 桃太郎岩(1,810m) 

 暗がりから沢の音が近づいてくると、天鳥川を右岸へ渡渉する。
空は次第に白み始めてきたが、飯森山の北斜面に居るためかなかなか明るくならない。

 天鳥川を渡ったところは小広く平らになっていて小休止に良さそう。




 涸れた沢床のようなところを進んでいくと巨大な岩に突き当たる。
球形に近い巨岩で中央部が割れており、これが桃太郎岩だなとすぐに分かった。
巨岩の底部には数多くの木によるつっかえ棒?がされているのが面白い。
 スローシャッターでどうにか写真には撮れたが、瑞牆登頂後に下ってきた時に改めてよく見ておきたい。

 桃太郎岩の右側に設けられている階段を登っていく。
山と高原地図によると、ここから瑞牆山山頂まで1時間30分。
等高線の詰まった手加減なしの激登りが待っているので、気合を入れて掛かりたい。








巨岩をすり抜けながら涸れた谷を詰める  もしかしておまじないの意味もあるかも? 

 桃太郎岩を過ぎると次第に明るくなって周囲の様子がよく分かるようになってきた。
ルートは谷の右岸に沿って続いている。
まだ緩やかな登りではあったが、巨岩が目立ってきたり段差の大きいところが次第に増えてくる。

 一部にはクサリが掛かっている岩場もあったが特に難しいところはない。

 最近まで異常に雨が多かったからか、どこの山へ行ってもドロドロになった。
でも今日は久しぶりに地面が乾いた状態のところが殆どだった。








 6:43 大ヤスリ岩基部を通過(2,100m)  クサリ場も現れていよいよ面白くなってきた! 

 谷沿いから瑞牆山本体へ向けての急坂が始まると、まもなくそそり立つ巨大な岩塔が見えてきた!
これが大ヤスリ岩…。

 登攀技術と装備があれば登頂出来るが、自分が進む一般ルートは大ヤスリ岩の東側を避けていく。
自分はクライミングを始めたい願望はあるが、もっといろんな山を歩きたい気持ちのほうが強い。
日に照らされて神々しい大ヤスリ岩を横目に、次第に斜度を増していく急坂を登っていく。








瑞牆山直下の急坂  筋力を使うところが多い… 

 深い樹林帯の急登が続くが、次第に空が広がってきて瑞牆山が近付いてくるのを感じる。
振り返ると木々の間から絶景を垣間見られるようになってくるが、じっくりと堪能するのは山頂での楽しみに置いておく。

 この急坂は脚をかなり上げなければならない段差が多くて、これは疲れそうだなと身をもって実感する。
しかしすぐに大ヤスリ岩を追い越したりして、面白いように標高を上げていくのが分かるので励みになる。
東西問わずやはり岩場の多い山は楽しい!








 7:10 黒森コース分岐(2,200m)   

 なかなかハードな急坂が続いたが、コル状の分岐に辿り着いて唐突に終わる。

 指導標によると瑞牆山頂まで10分!
ここではもう一つの瑞牆山登頂ルートである黒森コースと合流する。

 もっと時間が掛かるような気がしたが、思いがけず早く急坂を登りきった気がした。
分岐からはこれまでとは対照的に平らな山腹道となって息を整えられる。








瑞牆山山頂直下、最後の急坂となるが段差も最大級!  このハシゴを越えると行く手が明るい!

 平らな山腹道の前には足場の乏しい岩壁が立ちはだかっていた。
どこを登っていくのかと暫し観察したが、どうにもステップになりそうなところが見当たらない。
左側を登れればやや斜度が緩いけど、この時は凍結していて危なっかしそうだった。

 ということで、ここはクサリを手繰り寄せて腕力で登った。

 余談だが転居先では近隣に高級そうなジムしかなく、自分にはとても通えそうになかった。
ということでベンチとダンベルなどを購入して、自室で筋トレを続けている。
購入時はしんどいが転居前に通っていたジムの利用料で換算すると、
およそ8ヶ月で償還出来ることで決断した。




 話を瑞牆山へ戻すと、足場に乏しい岩場をクリアするとすぐに短いハシゴ。
ここは楽に乗り越えていくと、遂に上方が明るくなってきて待望の瑞牆山山頂に到達する。
山頂直下の森の中では先着のお二人が風を避けて休憩中。
挨拶を交わして山頂手前の森を抜けていく。








 7:21 瑞牆山山頂(2,230m)到着!!   

 森を抜けると一気に絶景が広がって、思わず「わお!」と歓声を上げずにはいられなかった。(笑)

 本当に素晴らしいというしかない絶景が広がる山頂だった…。

これから向かう金峰山がかなり遠くに見える!山頂付近にちょこんと飛び出ているのは目印になる五丈石。(五丈岩ともいう)
そして南側には富士山が相変わらず美しい。

 瑞牆山山頂は本当に石舞台のような場所で、森に覆われた北面を除いて周囲は正真正銘の絶壁となっている。
ここに登頂した深田氏のように小一時間もトカゲを決め込む余裕はないが、
出来るだけ長く瑞牆山頂での時間を過ごしていきたい。








そそり立つ岩峰が連なる…。瑞牆山は古くは地元ではコブ岩と呼ばれたという。  瑞牆山山頂自体も巨大な岩峰の一つといえる

 地形図では瑞牆山頂から東側の尾根へ歩いていけそうに見えたが、読図と実際の様相は大きく異なる。

 足元に気を付けながら周囲の絶景を満喫していった。








大ヤスリ岩越しに南アルプスの山々   

 いつの間にか多くの山頂を踏んできた南アルプスを何ともいえない思いで眺める。
聖〜荒川三山、そして仙塩尾根を縦走したのが遠い日のようだった。








程好い距離で見える八ヶ岳連峰の眺めが特に素晴らしい!   

 自分はまだ八ヶ岳は蓼科山しか登っていないが、一番北で目立っていてすぐに分かった。
蓼科の奥に見える北アルプスは既に真っ白。

 そしてやはり瑞牆から見ると赤岳に目が吸い寄せられる。
近い将来、赤岳を含めて八ヶ岳を南北に縦走してみたいものだ。




 空気が澄んでいて、どこまでもクリアに見えて本当に清々しかった。
しかし吹き付ける風はかなり冷たくて寒く、もう冬が近いのを強く感じられた。

 先着の方々はいつの間にか出発され、自分だけの貸切の瑞牆山頂になっていた。

 一しきり山頂での展望を楽しんでから風を避けて小休止をとる。
後々の行程を考えると、残念ながらあまりゆっくりはしていられない。




 7:55 瑞牆山山頂出発








富士見平小屋まで慎重に引き返す   

 標準所要時間では瑞牆山頂から富士見平小屋まで下りで1時間30分。
しかし激下りはけっこう脚に堪えるので、急がず丁寧に下っていった。

 この下りにおいては数組の団体をはじめ、多くの方々とすれ違った。
登りでは誰とも会わなかったが、瑞牆山の人気ぶりを今更ながら実感した。








 8:53 桃太郎岩(1,810m)   8:55 天鳥川渡渉地点(1,800m)

 激下りを終えて桃太郎岩まで戻ってきた。
明るくなってから改めて見ると、桃太郎岩と名付けるしかないユーモアな姿だった!

 天鳥川を左岸に渡り返してからは、今度は一転して激登りとなる。
仮に瑞牆山だけに登るとしても、けっこう中身の濃い行程といえると思う。








 9:23 富士見平小屋(1,810m)到着  おしゃれ感がなかなか良い雰囲気の富士見平小屋 

 概ね予想どおりの所要時間で富士見平小屋に戻ってきた。
明るくなって初めて見る富士見平小屋はけっこう居心地良さそうだった。
小屋前はキャンプ指定地にもなっていてテント泊も可能だ。
ヤマノススメの聖地巡礼のためにも、いずれテント泊の行程で再訪したい。

 なお周辺の木々は植林のカラマツが多いらしく、ずっと以前は地名のとおりに富士山が見えていたそうだ。




 富士見平小屋を起点に、これから第2ラウンド?となる金峰山への登りが始まる。
ここからの行程が長いので焦りがちになってしまうが、とりあえず瑞牆山の疲れを出来るだけ癒すためにも一休みしていきたい。








 9:34 富士見平小屋出発!   

 10分くらい脚を休ませてからいよいよ金峰山へ向けて登り始める。
金峰山へは富士見平小屋の南側、トイレ棟との間を抜けていく。

 事前の計算では9時過ぎくらいに富士見平小屋に到着することで、
残り7時間ほど掛かる金峰山へのピストンも可能になるとみていた。
僅かに予想よりは遅いが、やや撮影回数を減らすなどすると何とかなるだろう。

 当面の目標は一旦登りが落ち着きそうな鷹見岩分岐とした。
まずはそこまで標高差200mを登らなくてはいけない。




 富士見平小屋を出発すると飯森山西側の尾根に乗る。
その辺りでご夫婦で登られている方々と出会い、一旦自分が先行した。

 しばらく尾根上を登ったが、地形図どおりに南斜面の山腹道へ。
飯森山は南アルプスを思い出させるような針葉樹主体の深い樹林帯が続く。








10:09 鷹見岩分岐(2,010m)   

 飯森山の南面中央部辺りの鷹見岩分岐に差し掛かった。
分岐からは木々の間に鷹見岩というミニピークが見える。
出来れば立ち寄っていきたいが、今日の行程はギリギリなので不可能だ。
鷹見岩は金峰山の眺めが好展望のようなので、再訪時には立ち寄りたいと思う。

 分岐で小休止をとっていると、さほど間を置かないうちに先述のご夫婦がけっこう速いペースで通過されていった。
かなり山慣れた方々のように見えた。




10:15 鷹見岩分岐出発

 ここからしばらくは概ね平坦な区間が大日小屋まで続く。
次の小休止のための目標地点は急登が落ち着きそうな大日岩辺りとした。
自分は今日のような時間に追われる山行は基本的には好まないのだが、
安全さえ確保出来ればこれはこれで良い経験になるのではないかとも考えた。








10:24 大日小屋入り口を通過(1,990m)   

 鷹見岩分岐から10分少々で大日小屋付近を通過。
大日小屋は眼下の谷間にある。こちらは富士見平小屋と違って人けがないように見える。
背後のミニピークは先述の鷹見岩。

 なお山行後にGPSデータを確認してみると、鷹見岩分岐から大日岩にかけて地形図と大きくズレがみられた。
大日小屋の場所も大きく違ってくるが、周囲の光景を思い返すと地形図の破線のほうに修正の必要があるように思う。

 行く手の森の上には大日岩が見えてきた。
距離としては大したことはないが、ここから標高差200m余りの急坂となる。








大日岩への急登。部分的にはクサリも頼っていく。  瑞牆山からの疲れも感じるようになってきた

 あとから振り返ってみると、瑞牆山を除いてはここが最も辛い急坂だったように思う。
大日岩がなかなか近づいてこないように感じていたが、もう早朝からの疲れが出始めていたのだろう。

 なお金峰山への登りの途中では意外に多くの方々とすれ違った。
なかにはテント泊装備の方々もけっこう居られ、この山は基本的には宿泊を伴う日程で歩くのが良いと感じてきた。








10:55 大日岩基部を通過  後ほど登っていく樹林帯の稜線も見える 

 樹林帯の急登は大日岩の下に出てきて一旦終わる。しんどい登りではあってもやはり明るい岩場では気分が変わる。
ルートは巨大な大日岩の基部を通過していくが、あまりの大日岩の巨大さになかなか全貌を窺うことはできない。

 このあと再び樹林帯の急登となるが、まもなく大日岩が鎮座する主稜線にようやく乗り上げることとなる。








11:06 大日岩分岐(2,170m)   

 ここまでの急登で大きく息が上がった状態で大日岩分岐に到着。
ここから金峰山山頂までの標準所要時間は1時間50分。山頂到着は13時頃になりそうだ。

 先を急ぎたいが分岐から稜線上を逆に進んで、大日岩を間近で見ていきたい。








大日岩   

 主稜線で行く手を阻むかのように大日岩が迫力ある姿でそびえたっている。
時間に余裕があって、もし登れるものなら大日岩にも登ってみたいが見るだけにしておこう。
ここから北側の稜線にも破線道が伸びているが、山と高原地図によると大日岩北面のトラバースが極めて危険とある。

 暖かい大日岩のそばで数分だけ小休止をとってから主稜線の登りを再開する。








単調に感じる長い樹林帯の登りが続く   

 大日岩まで登ってきたことで、金峰山まで残る標高差はあと400m。
少し先の2,317mピークまで次第に急坂になっていくというしんどい展開で、
既にだいぶ疲れている脚には長く感じてしまう。








11:40 2,317m標高点ピーク   

 2,317m標高点ピークに乗り上げて、とりあえずはほっと一息付ける。
先にはまだまだ登りが続くので、ここでひとまず小休止をとっておく。




 この先から始まる標高差約100mの急坂があまりにしんどくて写真を撮らずに通過してしまう。

 この急坂の途中で鷹見岩分岐から先行されていたご夫婦が小休止中で、
再び自分が先行することになった。
お互いに疲れていたこともあって挨拶のみで済ませたので詳細は分からずじまいだが、
このあと金峰山山頂へのピストンの間に再び出会うことがなかった。
自分と同じく日帰りの行程であったのなら、時間的に厳しいと撤退されたのではないだろうか。








12:06 砂払ノ頭(2,410m)※GPSによる実測値です  金峰山山頂が見えてきたがまだしばらく掛かりそうだ。 

 辛い急坂が続いた樹林帯が唐突に途切れ、いきなり感動的に好展望な岩場に飛び出した!!
山と高原地図で金峰山と大日岩の中間にあると記憶していた砂払ノ頭に到着だ。

 ところで山行中には気付かなかったのだが、山と高原地図では既に通り過ぎた2,317m標高点ピークが砂払ノ頭とされている。
GPSのおかげで撮影位置が特定出来ることで、現地の指導標との間に相違が生じていることに気付いた。
2,317mピークのほうが等高線の閉じた明瞭なピークではあるが、いきなり大展望が広がるここのほうが固有の名称の付く要所に相応しい。
ネットで調べてみたけど特定できる情報は得られなかった。
公式の指導標にも表記されている点を重視して、この山行記録ではこの場所を砂払ノ頭と表記します。




 砂払ノ頭からはどんどん展望が良くなりそうだったので、ここで休まずもう少し先へ進んでみた。
すると森林限界を抜けた主稜線上に遂に金峰山山頂が見えてきた!
金峰山まで時間的に行けるかどうか微妙に感じていたが、距離からしてあと1時間くらいで着きそう。
ここでようやく予定どおりに金峰山へ登頂出来る確信を持った!

 この日は時間的余裕があまりなくて、金峰山は心ゆくまでゆっくり滞在とはいかなかった。
でも冒頭で触れた木暮氏の言葉のとおりに金峰山の素晴らしさに圧倒されることになる。








千代ノ吹上を慎重に歩いていく   

 森林限界を抜けてからは主稜線上に展開されていく壮大な光景に圧倒される!
左カーブを描く主稜線の行く手に五丈石を従える金峰山山頂。
山梨県側は千代ノ吹上と呼ばれる絶壁になっているので油断は出来ないが、常に富士山に見守られながらの登りとなる。
登山道は基本的に緩やかな山腹になっている長野県側を通っている。ということで、この主稜線は県境尾根でもある。(大日岩から東側)

 森林限界を抜けると絶景に囲まれて気が紛れるのは確かだが、小刻みなアップダウンが連続しており楽な道のりではない。

 昼頃という時間帯になってきて、金峰山からの下りの登山者と時々すれ違うようになる。








12:41 2,497m標高点ピーク  途中のミニピークに余分に登ってしまったが、目指す金峰山山頂が眼前に迫る。 

 金峰山山頂の場所は五丈石のおかげではっきり認識出来ていたので偽ピークでがっかりすることはなかった。
但し地形図でイメージしていた緩やかで単調な道のりではなく、次々と立ちはだかるミニピークを越えるような展開だった。

 部分的には薄っすらと雪が乗っているところもあったが、用意しているアイゼンを履く必要はまだ無いと判断した。




 途中で金峰山小屋へ向かうルートと分岐した。
時間さえあれば小屋へも立ち寄りたいところだが、今日はピストンだけで精一杯だろうから断念した。








13:02 五丈石   

 瑞牆山山頂からだと針みたいに小さく見えていた五丈石まで遂に辿り着いた!
出来ればこの岩にも登ってみたいが、とりあえず今は金峰山登頂が最優先だ。
五丈石の北側から回り込んでいくと、遂に山頂直下の広場に飛び出す!








五丈石を通過して金峰山山頂へまっしぐら 金峰山山頂付近(2,580m)。山頂は正面のうず高く岩が積み重なったところ。

 お昼過ぎの広場ではあちこちで登山者が寛いでいる。
自分はもちろん休憩は後回しにして、とりあえず奥に見える山頂を目指して突き進んでいく!








13:07 金峰山山頂(2,599m)到着!  やはり百名山を一日二山はきつい 

 遂に待望の金峰山山頂に到着した。
富士見平小屋を出発してから約3時間30分。
入念に行動時間を計算したうえで実行したダブルヘッダーだったが、日没までの行動時間を考えると際どい登頂成功だったと思う。

 時間的にもきついけど、体力的にも同様だった。
ここを再訪する時には同じ行程を組むのだけは遠慮したい。




 山頂滞在時間はあまり長くとれないが、やっとの思いで辿り着いたので出来るだけ楽しんでいきたい。

 息を整えながら見回してみると、三角点東側の巨岩上が2,599mの最高地点であることに気付いた。
とりあえず山名標で記念写真を撮ってから、巨岩を乗り越えて登っていく。








今日の行程で唯一の三角点。よく登ってこれましたと「金峯」に満足のタッチ。   








東側の奥秩父主稜線を眺める。遠目には緑の目立つ穏やかな稜線が続く。果ては東京都最高峰の雲取山へも通じる。  金峰山山頂からの絶景。感動し過ぎて言葉が出てこない思いでした!

 巨岩の上で強風に吹かれながら金峰山山頂での絶景を満喫した。

 奥秩父の主稜線はテント泊で縦走出来るので、ぜひ甲武信ヶ岳との間を歩いてみたい。
甲武信ヶ岳から金峰山縦走となると、バスや電車も使う大掛かりな計画をまた立てなくてはならないだろう。

 そして五丈石越しに望む富士山、南アルプスの光景がとてもユニークでただただ感動するばかり。
奥秩父はアルプスの呼称こそ付いていないが、今まで全く行動範囲に入っていなかったのが勿体なかった素晴らしい山域だった!








絶景の中に瑞牆山が際立っている   

 金峰山から瑞牆山を見ると、岩峰だらけの姿が本当によく目立っている!
自分の好きな山で何度も登った雪彦山に雰囲気が似ている。
実際に自分が登ってみると、近い両隣の山でも深田氏がそれぞれを百名山に選んだのも納得出来た気がする。

 それにしても朝に壮観な光景に圧倒されたのにここまで小さくこじんまりとした姿で見える瑞牆山と、
この金峰山までの長い主稜線を眺めると、改めてよくダブルヘッダーで歩けたなあと満足出来るような呆れるような。
でもこのあと瑞牆山荘までの長い下りも待っているので、ただただ感動ばかりもしていられないのだが。








せっかく持ってきていたので望遠レンズでも覗いてみました  




13:29 金峰山山頂出発

 金峰山山頂から瑞牆山荘までの下りの所要時間は3時間。
本当に名残惜し過ぎるが、金峰山への再訪を期して登ってきた主稜線を引き返すことにする。








五丈石にも名残を惜しみつつ下山開始!  金峰山の良い目印になってくれました 

 下山開始時にも比較的多くの登山者が居られたが、歩いていく方角からすると東の大弛峠からのピストンの方が多かったようだ。

 五丈石の北側から回り込んで、忠実に登ってきた主稜線を引き返し始める。
森林限界上では大岩を乗り越えるところが多いので、想像以上に疲れるルートだ。








ピストンの行程ではあるが、長大な下りなので焦らず慎重に歩いていく   








13:57 金峰山小屋への分岐(2,460m)を見送る   

 金峰山小屋(テント泊不可)で小屋泊まりとすると、一転して余裕のある行程となるが…。

 なお奥に見えている岩峰群の辺りが長野県側の廻目平(まわりめだいら)で、あちらからも金峰山への直登ルートがある。








 このあと、ほぼ同じ時間帯で瑞牆山荘へ下山する行程の登山者は、見る限りでは自分を含めて数人だった。
皆さん、それぞれに金峰山はしんどいと言われていた。自分も全く同感だった。

 ピストンの下りなので行動時間の短縮を図って撮影回数は少なめにした。
でも長い下りということもあって、休憩は定期的にきちんと確保した。








15:21 大日小屋(1,990m)   

 かなり撮影間隔は空いたが、概ね予想どおりの行動時間で大日小屋着。
ここまで来ると瑞牆山荘まで標準所要時間で85分。
今日は登り下りとも、ひたすら時間を計りながらの山行だった。

 このあと鷹見岩分岐を過ぎるまで地味な登り返しがあるのでここは休まず通過。
富士見平小屋まで下り一辺倒になってから次の小休止をとった。
六甲縦走で自然に身に着いた、行動時間短縮を重視した休憩の取り方が役に立った。








16:00 富士見平小屋(1,810m)到着!  富士見平小屋より下山再開。今度は自分もここでテントを張ってみたい。 

 ここまで疲れはあったものの、ほぼ標準所要時間で富士見平小屋に辿り着いた!
自分とほぼ同じタイミングで他の方も続々と下りられてくる。

 富士見平小屋から瑞牆山荘までは30分弱の所要時間なので、
これで明るいうちに確実に下山出来るという確信を持てた。




 まずは富士見平小屋に立ち寄って、瑞牆山と金峰山の山バッジを購入した。
中もきれいに整えられた山小屋ですごく居心地良さそうだった。

 買い物を済ませてから、小屋前のベンチに腰を下ろして最後の小休止をとる。
キャンプ指定地ではテントが2張り。すごく居心地良さそうで、このまま下山するのはただただ惜しかった。




16:11 富士見平小屋出発

 富士見平小屋からしばらくは尾根上の緩やかな下りとなる。
ここから先は早朝の暗いうちに登ってきた区間なので、次回の偵察も兼ねて初めての光景を楽しみながら下りたい。








16:20 瑞牆山の光景に感動する!   

 富士見平小屋から尾根伝いに下ったところでは、夕陽に照らされた瑞牆山の姿に改めて感動した!
「日本百名山」の記述のとおり、樹林帯から岩峰がニョキニョキ出てきているようなユニークな姿だ。




 瑞牆山の光景をしっかりと目に焼き付けてから下山再開。
瑞牆山の展望地からは尾根を外れ、里宮坂の激下りとなる。








美しい夕景を楽しみながらの激下り   

 夜明け前に登ってきたので分からなかったが、里宮坂まで下ってくるとけっこう紅葉が残っていた。
夕陽に照らされる紅葉は本当に燃えるように赤かった。

 里宮坂はかなりの急坂となっており、更にこの時期は落ち葉もあって滑りやすい。
ようやく残る行程は少なくなってきたが、最後まで油断せずに丁寧に下っていく。




 里宮平へ降り立つと広々として平らな森の中を下っていく。
明るい時間帯であればルートファインディングで目を凝らす必要などなく、散策気分で気持ち良く歩ける。








16:41 里宮平登山口・瑞牆山荘(1,510m)到着!!  瑞牆山荘へはJR韮崎駅からバスでアクセスも可能(季節運行。要確認です) 

 まだ明るいうちに待望の瑞牆山荘が見えてきて、ようやく心底安堵出来た!
出発したのが今朝の4時だから、12時間超の長い長い行程だった。

 夕陽は既に西側の山影に入ったが、下山時間はほぼ計算どおりだった。
瑞牆山と金峰山を首尾良く周回出来て、日帰りながら抜群の達成感に包まれて山行を終える。




 最後までヘッドライトを使うことなく山行装備を解いてから、夜道を運転して帰途に就いた。
全て首尾良くと言いたいところだが、山行計画を知らせていた母への連絡は17時頃になったのでやはり心配していた。
瑞牆山荘周辺では携帯の電波が通じなかったので仕方がない。








 〜 終わりに 〜

 絶好の登山日和にも助けられ、瑞牆山と金峰山を一挙に満喫することが出来ました。
しかし日帰りの行程に詰め込み過ぎた感はやはり否めません。
但し天候さえ許せば暑さも控えめで日の長い6月頃ならもっとゆとりを持てるかもしれません。

 もしダブルヘッダーの行程を組むなら、今回の時計回り順のほうがより安全と思います。
岩がちな瑞牆山は元気なうちに片付けて正解だったと感じました。

 ヤマノススメの聖地巡礼という要素も加わり、またお気に入りの山が増えました。
今回は長大な行程ながらも絶好の登山日和の下で登頂させてもらった両方の山、そしてきつい道中を共に出来ました方々に感謝です!
でも瑞牆山の漢字は未だに覚えきれません…。








行程断面図です




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