「裏銀座縦走1日目・ブナ立尾根を経て烏帽子岳」 2015年 8月 8日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「烏帽子岳」


山と高原地図 「鹿島槍・五竜岳 北アルプス」


 〜 はじめに 〜

 2013年9月に表銀座を踏破して以来、裏銀座縦走の機会が訪れるのを見計らっていました。
2014年夏はあいにくの長雨のために断念し、今夏遂にやっとの思いで確保した4連休と好天見込みという条件が揃いました。
しかし出発前日も仕事のせいで帰宅もやや遅れる等、数々の障害を乗り越えての遠征となりました。




 2:30過ぎ 駐車地、及び出発地である七倉に到着

 見たところ4、50台程度入るくらいの駐車場があって、8割方埋まった状態だった。
駐車場奥には七倉山荘、そしてゲート等があって、一般車両が入れるのはここまでとなっている。

 七倉から高瀬ダムへはタクシーで上がるのが理想だが、出来るだけ早発したいので準備を終えたらすぐ出発する。









 裏銀座縦走の起点、ブナ立尾根、及びその後の行程概要

 ブナ立尾根の起点となる七倉はマイカー以外に公共交通手段はありません。
JR大糸線信濃大町駅からタクシー利用となります。

 また、高瀬ダムまでタクシーは乗り入れ可能(一般車両不可)ですが、
乗り入れ時間は5:30※から<7月中旬〜8月中旬。通年は6:30から>〜19:00まで。
自分はタクシーで高瀬ダムまで送ってもらうとなると、やや登山開始が遅いと考えました。
よって駐車地の七倉から徒歩で高瀬ダムへ向かうことにしました。
徒歩なら24時間通行可能ですが、全く照明の無いトンネルもあるのでヘッドライトは必携。

 ブナ立尾根は北アルプス三大急登の一つとされていますが、
整備は行き届いており比較的歩きやすいと感じました。高瀬ダムからの標高差も1,300m余。
但し楽に登れるわけではありません。でもアルプスにはもっとハードなルートはたくさんあります。

 烏帽子小屋から烏帽子岳は休憩含め、往復2時間程度の所要時間です。
烏帽子岳山頂直下は鎖場が連続する岩場となります。

 烏帽子小屋からは槍ヶ岳を目指して森林限界を越えた長大な稜線歩きとなります。
天候の変化、また積乱雲の発達には要注意で、早発・早着が重要。
エスケープルートは野口五郎岳の南隣、真砂岳付近で分岐する竹村新道。
この場合は湯俣温泉経由で高瀬ダムまで分岐からは8時間の行程。
及び双六小屋から笠ヶ岳への稜線を南下し、小池新道を新穂高温泉へ約6時間で下る
2つのパターンが考えられます。

 烏帽子小屋の次はテン場があるのは、遠く離れた三俣山荘になります。
野口五郎小屋、水晶小屋は山小屋利用のみ。2日目は特に長い行程を乗り切らなければなりません。
三俣山荘の先は双六小屋もテン場があるので、3日目は状況によって調整が容易でしょう。

 槍ヶ岳へ到達出来れば、あとは各人のお好みや都合で上高地か新穂高のどちらかを下山地として選択します。




 裏銀座の山域を取扱っている書籍として、三俣山荘のご主人、
伊藤正一さん著
「黒部の山賊」がお薦めです。自分も読み始めたら3日ほどで読破しました。
この書籍を裏銀座縦走に際して読んでおくと、更に山行の充実感が増すものと思われます。
余談ですが裏銀座縦走を終えた今、改めて読み直している最中です。
実際に歩いたところが採り上げられているので、より書籍や地理の理解度が深まっています。

 
駐車場に隣接する七倉山荘

 裏銀座縦走完了後、ここで温泉を利用させていただくのを楽しみにして歩き始める。







 3:09 七倉(1,060m+)出発

 予め用意していた登山届を黄色いポストへ入れる。

 車止めのゲートを通り、七倉沢に掛かる橋を渡るとすぐに真っ暗なトンネルへ。
ヘッドライトの明かりだけが便りだ。
自分は目に見えるものしか信じない性質だが、単独行で歩くのは正直なところあまり気持ちの良いところではない。

 高瀬ダム直前までは平坦か緩い登りがずっと続いていく。








数か所あるトンネルの中には照明付きのところも 薄暗い中、見上げると谷を塞ぐ巨大なダムが。ここからはつづら折れの広い道路を登っていく。

 山と高原地図によると七倉から高瀬ダムまでの標準所要時間は1時間30分。(タクシー乗車なら15分)
5:30以降は通行出来るタクシー利用の場合と比べると、早発で確保出来る余裕はせいぜい1時間くらい。
出来ればもう少し早く七倉を出発したいところだったが、金曜夜の出発が遅れたためにこれで精一杯だった。

 昨夜は帰宅して入浴はしたものの、6時間の長距離運転を行って仮眠をとれていない状態。
まして今回は今日から4日間にわたる長距離の縦走。序盤の序盤である舗装路歩きで疲れないように極力ペースを抑えめにした。




 4:10 ダムサイトへの登りが始まる

 薄明るくなってきた頃、谷を塞ぐ巨大なダムが見えてくる。
東京電力の高瀬ダムの看板のところからつづら折れの登りが始まる。
このダムサイトへの最後の登りで一気に高度を上げていくこととなる。
2度ほど小休止を入れつつ、ゆっくりと登っていく。
昼間は土砂を積んだトラックや、登山者を乗せたタクシーが行き交っているのだろうけど今はまだ静かだ。




 4:45 高瀬ダム(1,270m+)到着

 ゆっくりと歩いたが、ほぼ標準所要時間どおりに高瀬ダムに到着。大きな岩に腰を下ろして小休止を入れる。
ダムに到着した頃にはだいぶ明るくなってきて、ヘッドライトは不要となった。
歩いてきたつづら折れの下方を見ると、数人の方が登ってこられているのも見える。
自分と同じように歩いて高瀬ダムへ入る方々はそこそこ居られるようだ。








 4:55 高瀬ダム出発

 ダムサイトからは烏帽子岳付近の稜線が既によく見えている。
烏帽子小屋、烏帽子岳までの標高差は1,300mくらいあるが、少し前に笠新道を歩いているのでお手頃に感じてしまう。

 ダムの傍を歩いている時は冷たい風が吹き付けてちょっと寒いくらいだった。

 道なりに西へ進むと再び歩道付きのトンネルに入る。








不動沢吊り橋を渡る

 トンネルを抜けると今度はやや揺れる吊り橋。
下はというと、工事用車両が行き交っている形跡のある工事現場のような殺風景な川原だった。
高瀬ダム周辺はダムによって地下水位が上がり、そのために山から流れ出てくる土砂を掻きだし続けないと埋まってしまうということで、
環境保全の観点からするとたいへん残念な状況と言わざるを得ない。
 山肌が崩落している様は今日の山行において随時見かけることとなる。








 5:13 濁沢キャンプ場

 吊り橋を渡り終えて不動沢と濁沢の間に出てくると濁沢キャンプ場に到着。
ブナ立尾根の前夜泊地としては理想的な場所といえるが、すぐ近くを工事用車両が走行することを考えるとここでテントを張るのはちょっと微妙かと感じる。
それと2つの沢の中洲のようなところなので、大雨に見舞われると危険な状態に陥ることも要注意だ。

 この後頻繁に見かけることとなる黄色い指道標には裏銀座の要所が記されていて、これにはちょっとテンションが上がった。








濁沢

 大きな尾根の麓を回り込んで濁沢へ入る。
奥には無名だがたいへん大きな滝。そして人工的な水路の上にはしっかりした橋が架けられている。
指道標に従って右岸へ渡り、この付近にあると思われるブナ立尾根登山口へと向かう。








 5:28 裏銀座・ブナ立尾根登山口(1,320m+)

 濁沢の西側山麓までマーキングで導かれるとブナ立尾根登山口へ到着。
七倉から既に2時間超掛かったが、ここからようやく山道へと入ることが出来る。
登山口からは比較的歩きやすそうな登りに見えるが、ブナ立尾根は北アルプス三大急登の一つということなので気を抜くわけにはいかない。

 なおこの辺りより後続の方々に時々追い抜かれるようになり、やり過ごしてから小休止も入れておくことにする。








ブナ立尾根・北アルプス裏銀座登山口  ブナ立尾根は行程の進み具合の目安になる番号が要所に割り振られている。登山口は12、烏帽子小屋は0。 




 登山口から登り始めると、まもなく鉄パイプで組まれた階段を登っていく。
「一人ずつ通過するように」という指道標が繰り返し設置されている。
階段が終わると急登は一旦は一段落し、山腹をトラバースするように高度を上げていくことになる。









ブナ立尾根を黙々と登っていく

 地形図を見ると、1,700mくらいまでは山腹をつづら折りで登っていく。
登山道はしっかりと整備され、ここも丁寧・ゆっくり足を運んでいくと体力の消耗を抑えられそう。

 そしてまもなく、ブナ立尾根の名のとおりに見事なブナの木も見られるようになる。
しかも幹回りが太くて貫録のある木が多い。
なおここでは風が全く無く、ダムで寒かったのがウソのように、すぐに大汗をかいてくる。








 6:27 No.10 地点

 登り始めから約1時間でNo.10 を通過。No.0までまだまだだが、これは小休止をとる目安にするには良い。

 ブナ立尾根の登山道は2,208.5m三角点から北東へ伸びている尾根上にある。
序盤はこの尾根を目指すべく、濁沢の南岸にある山肌を西へ回り込むようにして高度を上げていく。








 6:45 No.9 地点

 たんたんとマイペースで登っていくとNo.9。
初めてとなる烏帽子岳や野口五郎岳が待っていると思うと気が逸るが、辿り着く山々を考えると励みにはなる。
なお、No.9 地点の頭上には大きな岩(権太落シ?)があって、ここで三脚を立てるのは何となくためらわれた。








崩落激しい不動岳方面

 木々の隙間から北側には荒々しいというか、草木が禿げた山肌を見せる不動岳方面が見えるようになる。
山肌は崩落が著しい。北アルプスの他の山域では見られないこの光景はちょっと痛々しく感じる。








 7:02 No.8 地点

 未だブナ立尾根の登山道は深い樹林帯の中を進むが、この森が崩落によって消えることのないように願うばかりだ。

 No.9 から15分くらいでNo.8 に到着。照り付ける日差しは強そうだが森のおかげで暑さは相当和らげられている。
この頃、徐々にブナ立尾根を登るペースが出来てきた感がある。








 7:17 No.7 地点

 再び15分歩いたところで今度はNo.7。
この頃より登山道がいつしか尾根上を辿るようになってきた。
現在の標高は1,700mくらいだろうか。
概ね、等高線が詰まった状態と考えて差し支えないブナ立尾根だが、
番号が振られているところは傾斜が緩んだり、ザックを置くスペースがあったりして休憩適地となっている。








 7:49 No.6 地点「中休み」

 No.7よりも一回り広いスペースのあるNo.6 に到着。
番号のあるところで毎回ザックを下ろしてはいなかったが、ここでは「中休み」という名のとおりに行動食を摂ってしっかりと休憩をとった。
地形図を見ると、この後は緩急織り交ぜながら、尾根上を三角点まで突き上げていく局面に入るようだ。








 8:32 No.5 地点

 番号はいつも同じ間隔で振られているわけではないようだ。
No.6 から30分くらいかかってNo.5 。登山口から3時間経ってようやくブナ立尾根も中盤だ。

 まだ木々に覆われた尾根が続くが、西側には稜線が近くに見えるようになってくる。








 8:59 2,208.5m三角点

 しばらく急登が続いた後、傾斜が緩むと三角点が目に飛び込んでくる。
No.5 から約30分で、心待ちにしていた2,208.5m三角点に到着!
周辺には小さな広場が2箇所あって、空いていた三角点側のほうで小休止をとる。

 この頃既に多くの方々が続々と登られてきて、好天のブナ立尾根は活況を帯びてくる。
タクシーで高瀬ダムまで上がってきても、ペースの速い方だともうここまで登ってこられる頃合だろうか。








2,208.5m三角点 (No.4 地点)

 点の記を見ると僅かだが標高が高くなっている「小屋ノ沢」三角点。でも地形図を見回しても周辺に同名の沢は無いようだが・・。

 三角点はNo.4 。長いブナ立尾根も後半に入ってきた。




 9:09 三角点出発

   自分と抜きつ抜かれつで登ってこられた4,5人パーティーの方々もこちらで休憩中だった。
一旦自分が先行する形で三角点を出発する。
余談だが自分の場合はいつ撮影に入るか分からないので、後ろ側の空き具合は人一倍に気を配っている。
 
 三角点を過ぎると再び斜度が急になり、喘ぎつつ登るようになる。
やはり寝不足だからか、休憩をとってもすぐに疲れてしまう。








 
 9:21 タヌキ岩

 三角点からまもなくして、登山道上に立ちはだかるようにタヌキ岩が現れる。
見上げると本当に岩の上に大きな木が生えていてユニークだ。




 タヌキ岩を過ぎてもかなりの急登が続くが、この頃より周囲の景観が時々広く見渡せるようになってくる。
ブナ立尾根はいよいよ烏帽子岳へ向けて真西へ登る局面に入っているはずだ。








北面の不動岳を望む

 早くから崩落の激しい山腹を見せていた不動岳がよく見える。
北アの中でもややマイナー感のある稜線だが、いずれは針ノ木岳辺りから縦走しなければならないだろう。








 9:45 No.3 地点

 三角点のNo.4 から30分ほどでNo.3 に差し掛かる。
周辺はブナ立尾根北側斜面の崩落が激しく、そのおかげで北面の景観を広く眺められる。
烏帽子岳周辺の稜線はもう意外なほど近いところに見えており、北へ連なる山々を針ノ木岳まで見通すことが出来る。
この方面はアップダウンが激しく、また崩壊の進む稜線歩きは、いろんな意味でハードだろう。

 ほぼ同じタイミングで登っていた方々から良い写真は撮れましたか?と時々お声掛けをいただく。
実際はこの景観は白い山肌に露出が合ってしまって、雪の光景と同じように難しい。
それでも好天だけに、何を撮ってもきれいに撮影出来てますよと返答する。








10:05 No.2 地点

 下り中の方からもあと1時間ほどですよと励まされつつ登っていくとNo.2 に到着。
いよいよ烏帽子小屋へ向けてカウントダウンに入った感じで元気付けられる。








10:31 No.1 地点

 もう急登の途中では撮影する元気も出なくなる頃にNo.1 地点に到着。
ここで初めて尾根南側の視界が開け、明日縦走することとなる裏銀座の稜線が見えた!
と同時にブナ立尾根の登りも終わりが見えてきたことを感じる。

 ここでは登山道の続きが一瞬分からなかったが、尾根南側に一旦下っていくのを見つけた。








ふと振り返ると七倉ダムが見えた

 ここまで登ってきて今度は初めて東側の景観が開け、深い谷にある七倉ダムを見通すことが出来た。
車を置いてあるのはあのダムの傍だ。七倉からの長丁場と1,500m余の標高差を乗り越えたことに達成感を覚えずにはいられない光景だ!




 この写真を撮影後、三脚に重大なトラブルが発生!!
上記の写真を撮影後に三脚を畳もうとしたところ、なんと脚の一本が外れ落ちてしまった。
その場でもう一度、脚を刺し直そうとするがまたすぐに外れてしまう・・。よりによって裏銀座縦走の初日に、と愕然とする。

 自分が居たところは狭い山腹道で、このまま居続けては後続の方々の邪魔になる。
仕方なくトレッキングポールと外れた三脚の脚をまとめて持って登っていく。
まもなく傾斜が緩み、尾根を乗越して平らなところに出た。

 路肩が広がっているところを選んで、とりあえず三脚の応急修理を行うことに。
ただ単に繋いでもすぐに外れることは確認済みだったので、繋ぎ目をビニールテープでぐるぐる巻きにして鞘走らないようにした。
外れた脚だけ1段分のみ伸ばせなくなるが、他の2本の脚も伸ばす長さを合わせることで何とか使えそうだ。

 自分はいつもファーストエイドキットの中に一緒にリペアキット(結束バンド、細引き、ハサミ、自在、そしてビニールテープ)を入れている。
今回、予想も出来ない事態で役立つこととなった。自分の場合、三脚が使えなくなったら非常事態だ。手持ちのみで裏銀座の撮影は悲し過ぎる。

 この三脚の応急修理に約10分程度要した。
登山道の横で座り込んで作業をしていたので、通り掛かった後続の方々には不審に感じられたかもしれない。








11:03 主稜線直下に出る  主稜線上にある指道標

 応急処置を終えてから、とりあえず三脚の安定性を確かめるべく撮影したのが上記の写真。
ビニールテープで繋いでいるので不安だったが、カメラがぐらつくことはなかった。何とかなりそうだ。
やはり山では何でも持っておくべきものだなぁと実感した経験となった。
但しこれより3日後に下山するまで、ビニールテープの剥がれ具合を気にしながら、いつもより短くなった三脚を使うという不便な状態となってしまった。




 気を取り直して烏帽子小屋へ急ごう。応急処置の現場から僅かに登って遂に主稜線を越える。指道標の先の少し下ったところには待望の烏帽子小屋。
烏帽子小屋付近の主稜線は僅かに森林限界を越えていないのか、意外なほど森が深い。








11:10 烏帽子小屋(2,520m+)到着

 主稜線から僅かに下って、ようやく待望の烏帽子小屋に到着!!
この時、山小屋のことよりもまず裏銀座の稜線、そして初めて目にする読売新道が貫く西隣の稜線に目が釘付けとなる。
いよいよ明日から北アルプス最深部の山域へ踏みこむことへの期待はいやが上にも高まっていく。








No.0 地点 烏帽子小屋玄関前  裏銀座縦走へのワクワク感が募る指道標 

 烏帽子小屋はNo. 0 。ここでブナ立尾根に挑む行程は名実共に終了となる。
さっそく烏帽子小屋へ入ってテン泊の申込を行う。

 山小屋の受付は続々と到着する方が入れ代わり立ち代わりといった状況。
この日はテントだけでなく、山小屋も混みそうな雰囲気だ。
テン泊申込みと当面の水の補給のみを済ませてさっそくテン場へと向かう。








烏帽子小屋・キャンプ指定地

 烏帽子小屋のテン場は南へ5分程度歩いたところにある。
周囲は二重山稜のような稜線が広がっている地形で、おまけにテン場を小分けに区切るように草や木が生えている。
ここでは風からは完全に守ってくれそうな地形だ。地面は砂地がメインで寝心地も良さそう。




 当初は小屋からはやや離れるが、静かな環境を期待して、最も下ったところにある池の畔でテントを張るつもりだった。
しかしこの時点で既に団体さんと思われるテントの一群が陣取っていた。ということで方針変更。
池を見下ろすロケーションで、テン場の中ほどに空いていた平らな空間を見つけ、こちらに張ることとした。




 夕方になれば日陰に入って涼しくなりそうだが、設営の時には強い日差しが降り注いで大汗をかきながらテントを張った。
そしてテント内で必要最小限に荷物を整理するがテントの中は暑かった・・。
ブナ立尾根を登ってきて身体は休養を欲していたが、明日は夜明け前から南へ向けて縦走を開始する。
必ず今日の間に烏帽子岳へ登頂しなくてはならない。しかも雲が湧いてこないうちに。
ということでアタックザック装備に切り替えてさっそく出発する。




 テン場から烏帽子小屋まで戻ってきたところで、建物の日陰を利用して小休止をとった。
汗を掻きまくっていたので、とにかく塩気の行動食(柿の種)が美味かった。
ちょっと元気を回復させてから、いよいよ烏帽子岳へ向かう。




12:20 烏帽子小屋出発

 山と高原地図によると、烏帽子小屋〜烏帽子岳間の所要時間は登り50分、下り45分。

 歩いてきたブナ立尾根の登山道を僅かに戻ると、烏帽子岳や不動岳へ向かう登山道が分岐する。
しばらくは稜線上らしくない森の中を進むが、すぐに明るい砂地の稜線に出る。








前烏帽子岳へ向けて登りが始まる

 明るい稜線に出た途端、表銀座の燕岳と雰囲気が似ていると思った。
但し燕岳のようにイルカ岩やメガネ岩などのユニークな花崗岩の岩は無いようだ。

 稜線上には前烏帽子岳があって、まだ烏帽子岳は見えていない。
前烏帽子岳への標高差は約50mの緩やかな登り。
軽装に切り替えたとはいえ、脚は疲れているのでペースは上げられない。
登りでは数人の方に道を譲りつつ、ゆっくりと前烏帽子岳へ登っていく。
縦走路は烏帽子岳へピストン中と思われる軽装の方々の割合が高い。








12:35 前烏帽子岳<ニセ烏帽子岳>山頂 (2,605m)到着。遂に烏帽子岳の山容を拝む。

 なんとか前烏帽子岳までやってくると、遂に待望の烏帽子岳が眼前に現れる!
間近で見ても槍以上に尖っているその雄姿に感動する!また烏帽子岳越しには、まだ行ったことがない立山周辺も近くに見える。
早く烏帽子岳へ登りたいが、見飽きない光景でもあるので、小休止がてら眺めを楽しんで息を整える。

 また、前烏帽子岳はニセ烏帽子岳ともいわれるようだが、自分は語感的にも前烏帽子岳と呼ぶほうが好みなのでそれで統一する。








近づく烏帽子岳の雄姿 烏帽子岳へは縦走路を離れて、支線をピストンする 

 前烏帽子岳から一旦広い鞍部へ下ると、そそり立つ烏帽子岳の岩塔がより印象的だった。
烏帽子岳分岐付近までは歩きやすいが、烏帽子岳への登りが始まると既に疲れている脚が重いこと重いこと。

 烏帽子岳付近の登山道はハイマツの森の中を縫うように登っていく。
烏帽子岳の近くでは多くの登山者が行き交い、標準所要時間よりも長く掛かりそうだ。

 インパクトのある岩塔が近づくと急な鎖場、そして狭い山腹をへつる局面となる。
高度感ある場面だが三点指示を効かせると問題なく通過出来る。烏帽子岳の岩場は雪彦山を楽しく歩ける方なら不安はないと思われる。
岩場でも自分撮りをしたかったが、三脚の調子も良くないうえに人が多いので断念した。
次々と降りてくる下りの方をやり過ごしつつ、待望の烏帽子岳の頂へ。








遂に岩塔の狭い狭い頂上へ!

 直前に来られていたグループの方々が一人ずつ登頂されている様子を待ちながら見ておく。
岩壁は殆ど垂直だが手掛かり足掛かりは充分にあり、三点指示さえ出来ていれば問題なく頂上に到達出来そうだ。
但し本当に狭いので、一人ずつしかアタック出来ない。

 グループの方々が全員登頂し終わって降りた後で、いよいよ自分の番となった。




13:17 烏帽子岳山頂(2,628m)到着!!

 登頂したところは2つの岩の間というところで、もちろん頂上といっても差し支えはない。
でも何とか本当に一番高くなっている岩に座りたいと思い、自分の身長近くある岩によじ登る。
しかし斜めになっていて狭い岩に座るのは危険と感じ、登ったまま腕と肘でしがみつくに留めた。
下の2枚の写真は烏帽子岳の本当に最上部にある岩にしがみつきながら撮影したもの。








烏帽子岳頂上の岩にしがみついて撮影。 眼下の四十八池が印象的。 同じく烏帽子岳頂上の岩より。遥か眼下に早朝に通過した高瀬ダム。ダムの東側には唐沢岳が意外と近い。 

 慎重に後ろ向きのままで岩の間へ戻り、そのまま一段下の安定したところまで降りていく。
烏帽子岳の山頂は山容そのままに本当に狭い!高所恐怖症でない自分でもかなり緊張した。
身の確保と手持ち撮影だけで精一杯で自分撮りは不可能だった。








烏帽子岳山頂の尖塔より一段低い(目視で差は約5m?)ところは快適なテラスとなっている。  烏帽子岳山頂は狭い尖塔が連なる。比べると槍の穂先がかなり広く感じてしまう。

 尖塔のすぐ東側には広くてくつろげる岩があったので、こちらで山頂での時間を過ごしていくことにした。
岩は斜めにはなっているが、滑らない岩質なので全く恐怖感は無い。
すぐ西側にあるスリル満点だった尖塔が視界を塞ぐ以外は、ほぼ全方位の絶景が広がっている!

 すぐ南側には一段低いところに前烏帽子岳。
烏帽子小屋は見えていないが、明日真っ先に登りに掛かる三ツ岳が堂々とした姿を魅せる。
山と高原地図によると、烏帽子小屋から三ツ岳まで登りで1時間30分。標高差は約300m。
裏銀座縦走は歩き始めからいきなりやや大きな登りで始まることになる。
この後テントに戻ったらしっかりと足を休ませておかないと・・。

 三ツ岳越しには今回の縦走では立ち寄らない水晶岳も並んで見える。
一方、東側には遥か遠くに表銀座の大天井岳まで見通せる。
素晴らしい眺めを時を忘れて楽しむと共に、携帯の電波が立っていたので、自宅にメールしてブログ投稿もした。
夏休みで家に遊びに来ている姪から、「気を付けてがんばって〜」とすぐに返信が来て嬉しかった。

 南側、及び北側のどちらからも雲が湧いていたが、幸いなことに烏帽子岳周辺だけは全く雲が被ることはなかった。
ちょうど一年前のお盆に北岳に登って悪天のために大変な目に遭っている。やはり山は天気が重要、というか天気が全てだ。




13:50 烏帽子岳山頂出発

 いつの間にか30分近く烏帽子岳山頂に滞在していた。
本当に立ち去り難い山頂ではあるけどテントで休養もしたいし、根を生やした腰を上げてそろそろ降りることにしよう。




 烏帽子岳山頂からの下り途中でも登りの方々と次々にすれ違うが、中には同じワッペンを付けた十数名の登山ツアーの方々も。
改めて烏帽子岳の人気の高さを実感しつつ、三点指示を利かせて慎重に降りていく。




 前烏帽子岳への登り返しは短いけど、疲れた脚には相当きつく感じた。








14:22 前烏帽子岳山頂まで戻る。 烏帽子岳頂上は2本のスリルある尖塔(左側)と、やや広いテラス(右側)で構成される。

 やっとの思いで前烏帽子岳まで登り返す。
山頂では息を整えるついでに、望遠レンズにも交換しつつ烏帽子岳を撮影。
そして見納めとなる前に、しっかりと烏帽子を目に焼き付けておく。

 つい先ほどまで居た烏帽子岳山頂では、登頂中の方々の動きが肉眼ではよく見えていた。

 後ろの立山方面ではどんどん雲が湧いているのが気になったが、この日は安定した気圧配置だったので雲の発達は抑えられたよう。

 烏帽子岳の雄姿を思う存分堪能してから、前烏帽子岳山頂を出発する。
烏帽子小屋までは下りベースで15分程度だ。








15:00過ぎ 烏帽子小屋・キャンプ指定地到着

 山小屋で水や烏帽子岳バッジを購入してから、ようやくテントへ戻ってくる。
幸いにも草木のおかげで自分のテン場のスペースは日陰になっていて、テントでの時間を涼しく過ごすことが出来た。

 烏帽子小屋のテン場は草木のおかげで、場所によってはプライベート感覚の空間を確保出来る。
しかし展望が楽しめないことと、この緑深い環境のおかげで虫が多いのが難儀だった。蚊取り線香を持ってくれば良かった。
いくら稜線上にあるテン場とはいっても利用する場所によってはしっかりとした虫除け対策が必要となる。

 この日は山と高原地図を観ながら煎りたてのポップコーンを平らげる。自分は地図を観ているだけで楽しくて時間を潰せてしまう。
裏銀座縦走においては、山と高原地図も2枚必要となる。「鹿島槍・五竜岳 北アルプス」、「槍ヶ岳・穂高岳 上高地 北アルプス」
自分の場合は、これに加えていつも「日本アルプス総図 北アルプス 南アルプス」もテントでのお供に持っているので、
今回の山行で携行していた山と高原地図は合計3枚。これに更に地形図6枚も加わる。
明日の行程概念を山と高原地図によってしっかりと頭に叩き込みつつ、出発時刻と起床時刻を決めに掛かる。








夕方の静かな時が流れる烏帽子小屋  ブナ立尾根の大きな登りの余韻に浸ることが出来る光景

 夕食を済ませた後、就寝前にぶらりと烏帽子小屋まで散策に出掛ける。
小屋の前では登山者の方々が思い思いに時を過ごされていた。
テント、山小屋に限らず、この時間は本当にリラックス出来る。

 黒部の谷の向こうに夕日が見えたがやや雲が多かったこともあって、日没までは見届けていない。




 テントに戻る途中、テン場の中を通過していく裏銀座縦走路の道筋を明るいうちに確認しておく。




18:23 マイテントに戻って就寝準備

 まだまだテント内もランタンが不要なくらい明るいが、もう身体は睡眠を欲しているようですぐに爆睡出来そう。
 
 明日からはいよいよ裏銀座のハイライトとなる縦走が始まるが、明日の行程の標準所要時間は三俣山荘まで8時間50分という長丁場。
三俣山荘の直前にある鷲羽岳には何としてでも雲が湧きだす前に辿り着きたい。
 よって鷲羽岳には出来れば昼前に着きたいので、自分の歩行ペースで逆算すると出発時刻は2時30分頃としなければならないだろう。
ということで、明日の起床時刻は0時45分とした。睡眠時間はどうにか6時間は確保出来そうだ。

 金曜から2日分の疲れが溜まっているので、テント内で横になるとすぐに寝入った。








 「裏銀座縦走2日目・野口五郎、鷲羽岳を経て三俣山荘へ」と続きます。




行程断面図です




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