「聖岳から荒川三山縦走(1) 椹島〜聖平小屋」 2017年 7月18日(火)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「上河内岳」、「赤石岳」




 これまでに訪れた南アルプスの山々は、白峰三山や甲斐駒といった比較的アクセスの便利な北部に限られていました。
今回、入念に下調べを行ったうえで、初めて南アルプス南部に足を踏み入れることにしました。
頻繁に来ることはなかなか難しい地域なので、4泊5日を要して主要な三座を一気に縦走します。
より長く順光で縦走出来そうと考え、三座を時計回りで歩くことにしました。
体力的にはどちらの向きで歩いてもしんどいと思います。
これだけ大掛かりな山行なので天候はいつも以上に重要ですが、今回はちょうど梅雨明けと重なって全日登山日和となりそうです。




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 長野市から下道で約8時間掛かって、深夜2時頃に畑薙ダム夏季臨時駐車場に到着。
けっこう車がたくさん停まっているが、既に山に入っている方の車が多そうだ。

 椹島までの送迎バスだが始発でも7:30発と遅いので、充分に車中泊で仮眠をとることが出来た。




 6:00 起床







 行程概要  

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。



 畑薙ダム湖畔にある沼平ゲートより先は一般車は通行出来ないため、
登山基地にあたる椹島へは東海フォレストの送迎バスを利用します。
このバスは東海フォレストの運営する山小屋、避難小屋を最少1泊でも利用する登山者を対象にしています。
乗車に際し購入する施設利用券(3,000円)を宿泊費の一部に充当します。
その際に受取る領収証が無いと、下山時の畑薙ダム行きのバスに乗車できません。
よってテント泊登山者であっても、どこかで1泊は小屋泊まり(素泊まり可能)しなくてはいけません。
自分の場合は、4日目に千枚小屋にて素泊まりすることにします。

 2016年までは聖沢登山口で降車出来たようですが、現在は椹島でしか乗降出来なくなっています。
よって椹島から聖沢登山口間は歩くしかありません。
 なお井川観光協会の送迎バスに乗車すると聖沢登山口で下りることが出来ますが、
行程の都合により今回は東海フォレストのバスを利用しています。


  
 7:30発、東海フォレストの送迎バスに乗車

 3,000円の「特種東海フォレスト施設利用券」を購入してから送迎バスに乗車。
この日の始発便はこの1台のみで、待っていた登山者全員が乗車出来た。

 椹島までの殆どの区間は未舗装の悪路でよく揺れた。
乗車中は膝の上に置いた75Lザックを押さえておくのが大変だった。








 8:30頃、椹島着  この地図内の殆どの部分を歩いていくことになる。 

 1時間ほど掛かってようやく椹島に辿り着いた。椹島で既に深山の雰囲気抜群のところだった。
椹島では宿泊やテント泊も可能となっており、登山の行程によっては積極的に利用したい。

 送迎バスを下りてから、GPSを起動させるなどの登山準備を行う。




 8:50 椹島(1,120m)出発

 真っ直ぐ北へ向かうと登山道があって、バスが走ってきた林道の途中に出られる。
林道に出ると三叉路になっているが、聖沢登山口へはバスが走ってきた方向へ戻っていく。

 椹島へ辿り着くまでが大変だが、この山域はどこを歩いても椹島に戻ってこられるので、
周回コースを組みやすいのが大きな利点といえる。








 9:03 牛首峠(1,190m)   

 三叉路からすぐに牛首峠に到着。
ここからは赤石沢の奥にそびえる赤石岳を仰ぎ見ることが出来る。
あそこに立つのは2日後ということもあって、見えてはいても遥かなる山と感じる。

 なおこの牛首峠にはライブカメラが設置されていて、ネット上でも同じ光景を見ることが出来る。




 聖沢登山口へは暑い林道歩きとなるが、概ね平坦か下りで助かった。
出来るだけ日陰を選びながら歩いていく。








 9:34 聖沢登山口(1,140m)  クマが居て当然の山深いところだ。鈴とラジオで精一杯やかましくして歩くようにする 

 椹島から45分掛かってやっと聖沢登山口に到着。
もしここでバスを下りることが出来れば、1時間ほど早く登り始められるのだが仕方がない。

 登山口奥の日陰のベンチでは、下山された数人の登山者が休憩中だった。
今から登ることを伝えると、出発が遅いとびっくりされていた。
聖平小屋に着くのは夕方になるだろうけど、それでも樹林帯を歩くので稜線上よりは危険が少ないだろう。








手始めにまずは植林帯の急坂   

 登山口からいきなりの急坂で200mほど標高を稼ぐが、出発時間が遅いことも影響して暑さでバテ気味になった。








10:18 出会所小屋跡(1,370m)   

 最初の急坂を終えると、出会所小屋跡に差し掛かる。
小屋が建っていたような雰囲気はあるが、現状は何も残っていない。

 もう既に汗だくで息も上がっているので小休止を入れていくが、指導標を見るとまだまだ先が長い。








聖沢吊橋まではずっと山腹道が続く 部分的には柵まで設置されている 

 出会所小屋跡から聖沢吊橋までは大きな尾根を巻く山腹道が続く。
この区間では標高差は殆どないのだが、小刻みにアップダウンするので重装備は楽ではない。

 道が細くなっているところや崖沿いなど、ちょっと危ないところでは柵が設置されていて至れり尽くせりの山腹道だった。








11:12 聖沢吊橋(1,360m)  深山幽谷の趣が抜群の聖沢 

 次第に沢音が近づいてくると聖沢吊橋に着いた。
吊り橋はけっこう揺れるので面白いというかスリリングだった。

 吊り橋を渡ったところからはすぐに沢へ下りられそうだったので、
大人数で休憩するにも良いところかもしれない。
自分は後に急坂を控えているとあまり休み過ぎないほうが良いと感じるので、橋の袂で小休止を入れるに留めておく。








標高差300mにわたる急坂が始まる  小さな尾根に乗ったがまだまだ急坂が続く 

 聖沢吊橋を過ぎると、いよいよ今日の行程で最も長い急坂の区間が始まる。
造林小屋跡までの標高差300mにわたって、等高線が詰まり続けているので地形図を見るだけで疲れそう。
とにかくマイペースでしかもゆっくりめに登っていくしかない。




 この急坂を登り始めてしばらく経った頃、上記右側の写真を撮影時に三脚に重大なトラブルが発生!!
なんと三脚の脚のうちの一本が丸ごと外れてしまったのだった。
見ると雲台の基礎の部分と脚を繋ぐ部品が完全に破断していた。
三脚はある程度くたびれてきてはいたが、いきなり根元から破断してしまう事態は全く想定外。

 いつも携行しているリペアキットの中から、とりあえず結束バンドを用いて応急修理を試みた。
結束バンドで繋げただけなので脚がちょっとぐらついて不安だが、気を付けて設置すればなんとかなりそうだった。

          ということで、この後の自分撮りの写真は全てガタのきた状態の三脚で撮影したものです。
         この時に取り付けた結束バンドは2日目の朝で外れてしまい、その後は予備の細引きで括り付けて凌ぎました。
         毎日、行程を終えた後に三脚の状態を確認して、細引きを締めて括り直すのが日課となりました。
         リペアキットの中に細引きが無ければ、三脚が使えないという自分にとっては万事休すということになりかねませんでした。
         何でも持っておくべきものだと再認識しました。

 なお、行程中に三脚が壊れたのはこれで2回目。
前回は2年前の裏銀座縦走初日だった。
壊れる時は決まって、長期縦走の初日という因果な巡り合わせ。
この山行後に新しい三脚を購入したのは言うまでもないが、もう少しマメに点検というか定期的に更新していくべきかもしれない。
万全を期すなら毎年夏ごと、アルプス登山の前に更新すべきかもしれない。
それだけ自分にとって三脚は最重要装備品といっても良いものであると、改めて認識する山行となった。








12:32 造林小屋跡(1,740m)   

 三脚のトラブルという思わぬ事態でペースを狂わせられたが、
それでもどうにかこうにか300mの急坂を乗り越え、造林小屋跡と思われる平坦地に辿り着く。
この先は一転して緩やかな尾根になっているようなので、造林小屋跡と書かれている指導標は無いがほぼ間違いないだろう。
地形図に併せて山と高原地図も参照しているが、この山域では指導標は最低限の情報しか書かれていない。
読図していかないと、長大な行程ではペース配分に苦労すると思う。

 倒木の丸太に腰を下ろして、とりあえず足を休ませておく。
三脚は結束バンドで応急的に繋げてあるだけなので、とにかく丁寧に設置しなければいけない。
いつもよりセッティングに時間が掛かるので、今日のように登山道が空いているのが不幸中の幸いだった。
(というか登山口〜聖平小屋間で出会ったのは結局下りの1人だけ)




12:39 造林小屋跡出発

 この先、2,011m標高点付近の「乗越」までは、緩やかな尾根が続くのでほっとする。
でももう大概疲れてきているので、ペースはかなりスロー。

 見通しの効かない樹林帯の尾根ではあるが、北側の木々の間から聖岳と思われる高峰が見え隠れする。
明日朝にはあそこに立つのだが、まだまだ残された圧倒的な標高差を感じる。
それにしても昼までガスが掛からず稜線が見えてるのは珍しい。

 尾根の南側が崩壊地となっているところがあって、その際を通過するとまもなく乗越に到着となる。








13:31 乗越(2,000m)   

 乗越という呼び名のとおり、尾根の直上に乗り上げてきた。
ここもちょっとした広場になっており、小休止には好適なところだ。

 尾根の北側には疎らな木々の間に聖岳周辺の稜線がよく見える。
山頂はあいにくガスってきているようだが、奥聖岳が見えているようだ。




 乗越を過ぎると一貫して北斜面を貫く山腹道となる。








13:48 水場にて小休止  14:09 吊橋(2,110m) 

 乗越からしばらく登ったところで、豊富な水量の水場に通りかかる。
ここまで汗だくで暑い中を登ってきたので、有難くリフレッシュしていくことにした。

 手が痛いくらい冷たい水で最高に美味しく、顔を洗うと気持ち良かった♪




 山腹道は小刻みにアップダウンしながら大筋には登っていく。
通過に慎重を要するところもあって、ここも決して楽な道のりではない。

 山腹道の途中では吊り橋まで掛けられていて、かなり高度感のある崖上を延々と進んでいく。








聖沢の支流上部を通過  山深い南アルプス南部に身を置いていることを実感させられる 

 山腹道を延々と歩いていると、前方が開けてきて大きな谷を横切っていく。
水量はあまり多くなく、普通に山腹道の続きのように通過できる。

 谷床にあたるところでは東向きに大きく視界が開ける。
見渡す限り深い森に覆われた山々。東方には農鳥より南下してきた白峰南嶺の稜線が横切っている。








14:53 岩頭滝見台(2,170m)到着   

 谷を通過して山腹をぐるっと西へ回り込むと、岩頭滝見台?と思われる展望抜群の絶壁に差し掛かる。
北側には長大な二筋の滝が深い谷を刻んでいるのが見える。
再び晴れた稜線上には聖岳の山頂部が見えるが、その山体のあまりの雄大さを目の当たりにして圧倒される。

 通り過ぎるには惜しいところだったので、ここで小休止を入れていくことにした。
この圧倒的なスケール感は南アルプスならではだろう。




15:00 岩頭滝見台出発

 いつもの行動パターンなら既にテントを張ってのんびりしている時間になってきていた。
椹島を出発して既に6時間経過し、この時既に5日間歩ききれるのかと思うほど疲れていた。

 ここまで来ると聖平小屋までの標高差はあまりない。
ただ淡々と絶え間なく続くアップダウンを一つ一つ越えていくしかない。






15:16 聖平小屋まで1.8km、80分と書かれた指導標を通過

 あと1.8kmというのが長く感じる…。どうやら到着は16:30頃になりそうだ。








聖沢上流を俯瞰   

 もう1箇所で岩頭滝見台と同様の展望地があった。こちらには慰霊碑が設置されている。
岩場の崖っぷちからは、深いゴルジュ状の聖沢上流部が素晴らしい峡谷美を魅せてくれる。








15:34 細い沢を渡る(2,180m)  15:48 激下って橋を渡る 

 果てしないと思われた山腹道がようやく終わると、細いせせらぎを通過。
この先で小尾根を乗っ越すと、今度は激下りとなって橋が架かる沢へと降りてくる。
この聖沢のコースは下りで歩いても、けっこう登り返しがあるので楽ではないようだ。




 橋を渡って沢の左岸に降り立つと、今度こそアップダウンは殆ど見かけなくなってごく緩やかな登りが続いていく。








聖平への接近を予感させるなだらかな森が続く  聖平付近の立ち枯れが目立つ森 

 午後からは不安定な天候になる見込みだったが、どうにか雨に降られずに聖平小屋へ辿り着けそうだった。
もうかなりの疲れようだったが、なだらかな地形にも助けられて調子良く進んでいく。








16:06 斜めの橋を渡る(2,210m)  

 聖沢の支流と思われる沢をここで右岸に渡る。
橋は斜めになっているが、通過には支障はなかった。

 もうこの頃になると、聖平小屋はまだかまだかとばかり気が競っていた。

 この先でもう一箇所橋を渡って、遂に自家発電のモーター音が聞こえてきた!
そして森の向こうには待望の聖平小屋が見えてくる。長い長い道のりだった…。








16:23 やっと聖平小屋(2,270m)到着   

 椹島を出発してから7時間30分ほど掛かってようやく聖平小屋に到着した。
聖沢登山口で送迎バスを降車出来なくなった影響はけっこう大きかったと思う。

 ともかく、テントを張る場所を決めてザックを下ろしてから、小屋へテント設営の受付へ向かった。
ついでにコーラと聖岳の山バッジも購入しておく。
小屋の方々はテント泊装備でお疲れだったでしょうと労っていただいた。

 聖平小屋ではなんとウェルカムフルーツとして、フルーツポンチを提供してくれている。
疲れ切った体にフルーツポンチは本当に美味しかった!ごちそうさまでした。

 なお聖平小屋を含む南部山域の山小屋に宿泊すると井川観光協会の送迎バスを利用出来る。
しかし下調べで聖平のテン場にすごく惹かれていたので、今回は東海フォレストの送迎バスを選ぶことにしたのだった。

 後で聞いた話では、この日の聖平小屋はけっこうな賑わいぶりだったよう。
縦走よりも百名山のピークハントで利用されていた方が多いようだ。








手早くテントを設営して夕食準備  初日の夕食で最も重いレトルトのカレーとご飯を片付ける。アルファ米は軽いけどいつからか体が受け付けなくなった 

 お隣になった青いテントの方は便ヶ島(長野県側)から登られ、明日は聖までピストンされるという。
荒川三山は昨年に歩かれ、本当に大変だったそう。
自分も初日で既に疲れ果てていたが、寝たら体力がある程度回復することに期待したい。

 山談義をしながらもテントを手早く張って、夕食の準備に取り掛かる。
いつもなら全てやり終えて、寝床を広げてる時間帯だった。
なるべく早く寝て、今日の疲れを出来るだけ取らなければならない。




 山と高原地図によると、聖平小屋から聖岳(山頂扱いの前聖岳を指す)まで所要約3時間。標高差はまだ700m余り…。
明日は百間洞山の家までの長い行程でもあることから1時起床。3時出発とした。

 ちょっと遅い夕食だったが、19時30分頃には就寝出来た。








 「聖岳から荒川三山縦走(2) 聖平小屋〜百間洞山の家」へ続きます。








行程断面図です




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