「聖岳から荒川三山縦走(3) 百間洞山の家〜荒川小屋」 2017年 7月20日(木)



国土地理院地形図
 : 25000分の1 「上河内岳」、「赤石岳」






 2:00 起床

 夜の間に一時的に雨が降っていたようだが、テントから顔を出してみるときれいな星空が見える♪
すぐ横を流れる沢の水音を聞きながら、安心して出発準備に取り掛かる。




 4:05 出発

 出発準備を全て終えて、ストレッチをしていると2人分のヘッドライトの灯りが見える。
4時出発と昨日聞いていた、ご夫婦の方が最初から先行される形となった。

 段々状の広いテン場を通り過ぎ、しばらくは見通しの効かない樹林帯を緩やかに登っていく。
大沢岳から百間平にかけての尾根は広いので、コルは通過せずにそのまま斜面を登っていくようだ。
まもなく森からは抜けるが、百間平の肩まではいきなりの急登が続くことになる。








 行程概要  

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。


昨日、通らなかった大沢岳を振り返る   

 大沢岳は横から見ると、なかなか格好良い双耳峰であることが分かる。
また写真では分かりづらいが、2,814mピークから百間洞へ向けて登山道がジグザグに続いているのも見える。
山と高原地図ではこの区間だけが難路を示す破線道扱いとなっていて、大沢岳のみ主稜線のミニピーク群の中では半分バリルートのような存在なのだろうか。

 百間洞からずっと急登が続くので、見る間に標高を上げていく。
斜面の上方には先行し続けるご夫婦が見えるが、自分の遅いペースでは追いつけそうにない。








百間平の肩までの急登  

 行程3日目ということで疲労の蓄積もあり、また歩き始めでもあるのでとにかくゆっくり。
初日、2日目よりは行動時間が短めとはいっても、決して楽な道のりではない。








昨日、激しいアップダウンを乗り越えてきた山々を振り返る   5:25 最初の急登を終える 

 肩が近づいてきて、ふっと傾斜が緩んでとにかくホッとする。
立ち休憩がてら昨日歩いてきた稜線を振り返っておく。
稜線歩きというよりも兎、小兎、中盛丸山と三山登ったという感触だった。

 ほぼ傾斜が無くなると、行く手には今日初めて赤石岳が見えてくるがまだ遠い。
西側から見るとどこが山頂なのか分かりにくかった。








 5:31 百間平(2,760m)到着  しばらく続く百間平 

 一面ハイマツに覆われた広大な草原に差し掛かる。
かなり朽ちた指導標があって、百間平に入ったことが分かる。

 正面にはちょうど赤石山頂から眩しく朝日が射してくる。
ここでザックを下ろして、日焼け止めを塗るなどしながら休憩をとっておく。




 5:42 百間平出発

 ハイマツの中を縫うように登山道が続いていく。
植生保護のためかロープと杭で規制しているところもあった。

 少し進むと別の指導標が立っていて、キャンプ禁止と書かれている。
この素晴らしいロケーションを前にするとテントを張りたくなる気持ちは分かる。








赤石岳へ続くなだらかな稜線をゆく  百間平、そして聖岳を振り返る 

 百間平を過ぎると次第に尾根は狭まってくるが、まだまだなだらかで幅の広い状態が続く。
聖から歩いてきた稜線の中で、ここだけは別天地のような快適さだ。

 南側を振り返ると、昨日向こうからも感じたように聖がかなり遠くに見える。
赤石から聖へ向かってもハードな道のりで2日掛かりなのは変わらない。

 この辺りで後続の若い単独男性の方に追いつかれる。








赤石を正面にして痩せ尾根を進む  威風堂々とした聖岳の雄姿だが、小さな雲が湧き出してきて嫌な予感がする 

 赤石が正面に回ってくると、自分好みの岩場交じりの痩せ尾根となる。
特に難しいところはないが、景色を眺める時は立ち止まってからにしたい。
正面に立ちはだかる赤石の巨大なシルエットも圧倒されるが、南側に居座る聖の雄姿に改めて魅入ってしまう。
初日から何度も思うけど、南アルプスは本当に一つ一つの山が大きい。








2,827m標高点ピークが近づいてくる  2日連続でライチョウの親子に遭遇! 

 岩尾根の直上か、もしくは少し北斜面を進んでいく。
行く手には2,827m標高点ピークと思われるところが近づいてきて、百間平から続いてきた快適な区間が終わろうとしている。

 尾根を軽快に進んでいると、またライチョウの親子に遭遇した!
昨日に小兎辺りで出会った時と同じく1羽のヒナを連れているが、同じ親子かどうかはもちろん分からない。
それでもヒナの逃げっぷりと親鳥の間合いの取り方は昨日とそっくりだった。
広角レンズでなんとか逃げられる前に2羽まとめて撮影することが出来た。

 今回の5日間の行程で、ライチョウに出会ったのはこの時までの合計2回。
南アルプスのライチョウは北アルプスより個体数が少ないと思っていたので意外だった。








 6:40 2,827m標高点ピーク   

 ライチョウの親子とお別れしてから、まもなく2,827m標高点ピークに差し掛かる。
現地には何も指導標は無いが、ちょうどルートを示す杭が立っている。

 行く手には赤石の大斜面が目の前に立ちはだかっている。
大斜面は巨岩が積み重なった急斜面となっていて、ルートは南側にトラバースしながら登っていく。
2,820mコルから3,120mの赤石山頂まで続く、今日最大の300mの登りが始まった。

 百間平からまとまった登りが無くて比較的楽な区間が続いたが、それでも大斜面のトラバースは段差の大きいところも多くてしんどい。
時々、浮石もあるので登りでも要注意。但し日陰で涼しく登れたのは幸いだった。








 7:04 小平地(2,910m)   

 大斜面のトラバースは小平地に出てきて終わる。
けっこう登ったつもりだったが、コルからここまででまだ100mも標高差を稼いでいない。

 続きの東側の急坂に取り掛かる前に、ここで小休止を入れておく。
ここの指導標によると赤石避難小屋(頂上付近にある)まで50分とある。
まだまだ先と思っていた赤石山頂もだいぶ近付いてきたことで元気付けられる。




 7:10 小平地出発

 まだ朝7時過ぎというのに、早くも東側から雲が湧き始めていた。
ガスガスの赤石山頂になりかねないが、登るペースを上げるのは不可能なのでもう成り行きに任せるしかない。
2日目までより行程時間が短いので出発時刻を4時としたが、やはり3時にすべきだったかと自分の判断に甘さがあったかもと反省した。

 小平地からの急坂もなかなか手強く、砂ザレで滑りやすいジグザグが続く。
それでも日が陰りがちで涼しく登れたことと、赤石の壮大な山肌に元気付けられて
遅いなりにしっかりペース配分して乗り越えることが出来た。








 7:46 山頂部の一角に乗る(3,070m)   

 ジグザグの急坂がようやく終わると、辿り着いたところは想像以上に広大な山頂部の南端だった。
雲に遮られがちということもあったが、地形図を見るまで周辺の様子を把握し切れなかった。
それにしても赤石の山肌は本当に赤っぽい岩で覆われていて感動した。

 ここでジグザグの急坂の途中から追い上げてこられていた、後続の3、4人の若い男性パーティーの方々に道を譲る。
全員山小屋泊装備ではあったが、自分とは桁違いにペースが速くてすぐにガスの向こうに消えていった。

 山頂まで残る標高差は50mほどだが、もう既にバテバテだったのでここでも小休止を入れた。

 赤石の山頂部は南西から北東へと長く伸びていて、ルートはその南東斜面をトラバースしていく。
時折ガスが切れると、今自分がすごい高峰を歩いていることを改めて実感する高度感だった。








遂に赤石山頂が見えてくる!   

 広大過ぎてなかなか全容を掴みきれない山頂部だったが、直前まで来てようやく登山者の集う赤石山頂が見えてきた!
山頂を目前にしてもどかしいが、この後少しだけ下りとなって山頂直下の雪渓を渡る。
避難小屋の横を通過すると、ようやく待望の赤石山頂に辿り着く。








 8:12 赤石岳山頂(3,120.5m)到着!!  南北に細長い赤石山頂 

 百間洞から4時間超掛かって、遂に待望の赤石山頂に到着した!
幸いにも周囲の雲はだいぶ切れ間があって、ガスで展望無しという事態は免れることが出来た。

 山頂は広大な山頂部の中の北端に位置していて、周辺よりは少しだけ高いという感じのところだった。
山頂に限っていえば意外とそれほど広くはない。

 それにしても聖から赤石への道のりは長く、非日常の縦走の醍醐味を噛みしめた。








大きな一等三角点「赤石岳」  歩いてきた西側の尾根を振り返る。遥か下方で百間平が雲の向こうに霞んでいる

 雲の流れ方に癖があって、常時南側は厚い雲に覆われていた。
よって赤石山頂からだけ聖を観ることはできなかったが、ここまで来る途中に思う存分観られたので良しとしよう。

 西側の百間平方面を振り返ることは出来たが、改めてその距離感の長さに驚いてしまう。








赤石から小赤石を見据える。小といっても小さくはない   

 ここから荒川小屋まで下り基調の行程後半となるが、心配したほどガスガスの中の縦走ではないようだ。

 ひとしきり撮影してから、赤石山頂で小休止を入れておく。
終始ほぼ貸切の赤石山頂で時を過ごすことが出来た。








 8:40 赤石岳山頂出発   

 名残惜しいけど約30分の滞在で出発する。
今日の核心である赤石山頂は踏んだが、この後の稜線歩きも充分魅力的なものであると眺めていて気付いた。

 東側には赤石への最短ルートである東尾根(大倉尾根)が長大な姿で見えていた。
遥か下方の尾根の基部は椹島だが、ここからだと赤石山頂部に遮られて見えない。
尾根の中腹には赤石小屋が小さく見えている。
2日前にしんどい思いをして聖沢登山口から登ったが、この東尾根も負けず劣らずしんどそうだ。

 赤石山頂から離れるにつれてけっこう急な下りとなる。
続々と登り中の方とすれ違うが、殆どの方が本当に辛そう。








 9:00 東尾根下降点(3,040m)   

 赤石山頂からの下りが一段落すると、東尾根下降点へ差し掛かる。
指導標に記されている椹島の文字を見て懐かしく思えるが、自分が下るのはまだ2日後。
今回の行程ではこの尾根だけは積み残してしまう形になるが、いつの日かここを登って赤石へ再訪することもあるかもしれない。








小赤石が近づいてくる  北側から赤石の雄姿を間近に 

 赤石から小赤石にかけての吊り尾根というべき、明るく開けた稜線歩きが続く。
うっとおしい雲は上手いこと赤石周辺を避けてくれたので、思う存分展望を楽しみながら北上することが出来た。

 東尾根下降点を過ぎると、再び人けは少なくなる。
人の流れを想像すると、赤石小屋からのピークハントの行程の方が多かったのかもしれない。

 小赤石への登り返しは40mくらいではあるが、自分の脚はもう登りとなると一気に重くなる。
短くてもしんどい登りを耐えていくと、背後には先程まで居た赤石がまた一変した雄姿で見送ってくれる。








 9:23 小赤石岳山頂(3,081m)   

 短い急登を終えて小赤石岳山頂の南端に乗り上げる。
山頂はここも南北に細長くて、意外にも赤石本峰よりも広い。

 ここで小休止を入れてもよかったが、行く手に見えてきた荒川三山に誘われてもう少し先へ進むことにした。








小赤石の肩へ向けてのスカイライン  たまには足を止めてお花畑も楽しむ

 小赤石の山頂北端から下りに掛かると、小赤石の肩(3,030m標高点ピーク)に掛けての素晴らしい稜線が眼前に広がる!
その向こうには明日越えていく荒川三山の存在感が増してくるが、悪沢岳のみ大きな雲がなかなか消えなかった。
 それでも赤石を越えた疲れを忘れさせてくれるほどの絶景だった。

 小赤石の下りは少しだけ急なところもあるが、小赤石の肩までは素晴らしい稜線漫歩となった。
この山域のお花畑は荒川三山が最も大規模と聞いているが、小赤石付近もなかなか見ごたえがあった。








 9:44 小赤石岳の肩(3,030m)到着   

 絶景に囲まれて夢見心地?で歩いていくと、小赤石岳の肩(3,030m標高点ピーク)に辿り着く。
ここで初めて今日の終点となる荒川小屋が小さく見えてくるが、見えてからが長いのはもうさすがに学習してるので気は抜かない。

 荒川小屋の背後には荒川三山のうちの二峰、前岳と中岳がそびえている。
明日の行程もやはり急登で始まることを視覚的に確認出来る。
百間洞から先行されたご夫婦は千枚小屋まで進まれるとのことだったので、
赤石を越えた後にあそこを登っていかれることになるのかと改めて大変な行程と納得した。

 小赤石の肩まで来たことで、この先はほぼ登り返しは無くなるはず。
しかし長い下りも脚に疲れを覚えやすいので、ここでしっかりと小休止を入れておくことにした。




 9:54 小赤石岳の肩出発








大聖寺平への下り  部分的に雪渓も残る 

 小赤石の肩から次の目的地である大聖寺平までは約300mの下り。
途中の150m分くらいまではかなりの急坂が続く。
この区間では続々と登り中の方とすれ違ったが、ここは本当に皆さん辛そう。
この辺りではずっと日当たりが良かったので、登りでは大汗をかくことになると思う。
自分も昨日の兎岳へのきつかった登り返しを思い出していた。

 大聖寺平が近づいてくると、傾斜は緩くなってきてほっと一息付ける。
但し地形的な特徴が少ないところなので、ここで視界が無くなるとルートミスに注意と思う。
一部には雪渓を横切るところもあって、ここだけ空気がひんやりしてちょっとした清涼剤になった。








10:36 大聖寺平・小渋川下降点(2,720m)到着   

 2,699mコルに降り立つ手前で小渋川下降点に差し掛かる。
ちょうど下りが一段落したところで、ここで小休止を入れておくことにした。

 大聖寺平とはコルのことを指すと思っていたが、地形図をよく見たらちょうどこの辺りに地名の記載がある。
コルだけではなく、この辺り一帯を指す地名なのかもしれない。

 ここへ合流してくる小渋川ルートは半分沢歩きで、渡渉地点を自分で見極めながら沢を詰めなければいけないという
かなり難度の高いルートのようだ。




10:48 出発








2,699mコルより山腹道へ  昨日の百間洞手前よりは歩きやすい山腹道だった 

 小渋川下降点より少しだけ下って、2,699mコルより山腹道へ入っていく。
コルには特種東海製紙の指導標とケルンが目立っている。

 このコルから前岳へ上がる稜線には登山道の痕跡が見受けられたが、かつては使われていたのだろうか。
但し前岳直下の岩崖は見るからに危険そうだった。

 山腹道に入っても、赤石を目指す登山者とたびたびすれ違った。
時間的にみて早朝に千枚小屋を出発されて、今日は赤石山頂と赤石小屋を目指されるのだろうか。








11:32 荒川小屋(2,620m)到着!   

 ちょうど出発されるところだったツアー登山のご一行の方々と入れ替わるように荒川小屋に到着。
2日目までよりは短い行程とはいえ、7時間30分掛かって歩き応えもかなりあった。

 まだ12時も過ぎておらず、時間的には中岳避難小屋まで充分行けるだろう。
でも今から標高差400mの急坂に挑む気にはならなかったし、荒川小屋のテン場も捨て難い。

 さっそくテント設営の受付を済ませ、小屋の下側にあるテン場へ向かう。
昨日の百間洞のテン場よりだいぶ小屋やトイレ、水場が近くて便利だ。








荒川小屋・キャンプ指定地(2,610m)   

 荒川小屋のテン場は段々状で開放感があり、また白峰南嶺や小赤石の肩などの眺望にも恵まれている。
北側には荒川三山が間近な位置にあるが、こちらのほうは雲が掛かって殆ど見えなかった。
但しテン場に限っては午後もけっこう日が当たって暑かったが、テントをはじめとしていろいろ干すことが出来たのは良かった。




 最低でも1泊は東海フォレスト運営の山小屋に宿泊して、3,000円で購入した施設利用券を使わないと、下山後の送迎バスに乗れないという規約がある。

 自分の場合、最後の宿泊地となる千枚小屋で小屋泊を予定しているので、今回の山行でテントを張れるのは荒川小屋が最後となる。
ここでは充分にテントでの時間を過ごすことが出来たので良かった。3日間の疲れもあったので珍しく昼寝まで出来た。

 ちなみにここの水場は沢をそのまま利用しており豊富な水量で最高だった♪
前岳から染み出す水はたいへん冷たく、手が痛くなるほどだった。
今回の山行ではどことも水が豊富で本当に有り難かった。

 夕方近くになると設営されたテントは観る限りでは10張りくらい。
小屋泊の方も含めて赤石以北のほうがやや登山者が多いような気がする。

 入山後、ここで初めて携帯の電波が通じた!
出発前に山行計画を伝えていたので、非常に心配しているはずの母にメールしておく。

 赤石山頂で雲に巻かれそうになった今日の反省を生かして、明日も行程は短めながらも1時起床、3時出発とした。
午前中早い時間に雲が上がってくるのを見越して、その前に悪沢岳まで越えてしまわなければならない。




 今日も16時頃に夕食を済ませ、19時前には就寝した。








 「聖岳から荒川三山縦走(4) 荒川小屋〜千枚小屋」へ続きます。








行程断面図です




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